安達弾~打率2割の1番バッター~ 第26章 夏の甲子園千葉大会準決勝 船町北VS千葉修道⑲

 千葉修道打線の猛攻に最後まで追い詰められながらも、何とか勝利をものにした船町北高校。そして、あと一歩というところで敗れた千葉修道高校。

「相手のピッチャーが予想以上に手強かった。それでもお前達は、最後まで諦めないで粘り強く戦ってくれた。負けたのは全て俺の責任だ。本当にすまない……」

 伊藤監督の言葉に、千葉修道ナイン達は涙を流しながら耳を傾ける。

「3年生のみんなは、今日の試合をもって引退することになるな。思えば2年前の春……」

 試合終了後、球場の外で千葉修道高校が涙涙のミーティングをしている中、船町北高校は足早にバスに乗り込んでいた。

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 試合が終わった直後、接戦を何とか制した船町北ナイン達は無邪気に大喜びしていた。

「よっしゃ―勝ったぞー」

「最後はハラハラしたな」

「また吉田が逆転されるかと思ったぜ」

「これで春季大会のリベンジ達成だな」

「この調子で決勝戦も勝とうぜ」

 そんな選手達に、鈴井監督が一喝した。

「浮かれてんじゃねえぞ! お前ら忘れたのか? 明日の決勝戦の相手は、あの絶対王者龍谷千葉を破った三街道だぞ」

 鈴井監督の言葉に、一気に大人しくなる選手達。

「明日の決勝戦まであと22時間しかないんだ。さっさと学校に戻って録画しておいた準決勝の映像を見て作戦を考えるぞ」

「はい!」

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 学校に到着すると、休む暇もなく録画しておいた準決勝三街道VS龍谷千葉の試合を再生し、チーム全員で見始めた。

「それにしても、今でも信じられないな。あの龍谷千葉が負けただなんて」

「しかも確か2点しか取れてなかったよな」

「三街道の先発は……細田兄弟の弟の方か。てことは、細田弟が龍谷千葉打線を2失点で抑えたってことか」

「いや、途中で兄貴に継投した可能性もあるぞ」

「確かにそうだな」

 そうこう話している内に、細田弟の投球練習が終わり試合がスタートした。