安達弾~打率2割の1番バッター~ 第26章 夏の甲子園千葉大会準決勝 船町北VS千葉修道⑬

 8回裏。エース中原を2番手ピッチャーの原口に交代させた伊藤監督だったが、結論から先に言うと大失敗だと言われても仕方がないような結果となってしまった。

 この回の先頭7番滝沢をいきなり四球で出塁を許してしまうも、続く8番西郷9番吉田を連続三振で抑えた原口。しかしその間、ランナーの滝沢は盗塁で3塁まで進んでいた。

 2アウトながらランナー3塁の場面で、バッターは1番星。

(2アウトだしバントはないな)

 そんな千葉修道の内野手達の裏をかく絶妙なセーフティーバントを1塁方向に転がした星。1塁はもう間に合わないとホームに送球するファーストの真山だったが、サードランナー滝沢のスタートが早く楽々セーフ。船町北は貴重な追加点を奪った。

      123456789
 千葉修道 00000012
 船町北  00000031

 船町北の攻撃はまだ終わらない。2番野口もレフト前ヒットで出塁し、3番安達へと打席が回る。

(ランナーが2人もいる場面で、安達との勝負はあまりにも危険過ぎる)

 小林原口バッテリーは当然のように安達を敬遠する満塁策をとり、4番山田との勝負を選んだが……。

「カキーン!!!」

 ライト線を破る走者一掃のツーベースヒットを打たれ、さらに3点を追加される。

      123456789
 千葉修道 00000012
 船町北  00000034

 さらにさらに、続く5番石川にもライト前ヒットを打たれさらに1点追加された原口は、結局この回5失点も許してしまった。

      123456789
 千葉修道 00000012
 船町北  00000035

(5点差か……きついな)

(ていうか、何で中原代えたんだよ)

(完全な采配ミスじゃね?)

 千葉修道ナイン達は、声には出さないもののそんな不満を抱きながら9回表の攻撃を迎えようとしていた。その時、伊藤監督は選手達を集めて円陣を組ませると、こんなことを言い始めた。

「お前ら覚えているか? 今年の春季大会で船町北と戦った時、9回1アウトから比嘉を打ち崩して、交代で吉田が出てきた。あの時のスコアが丁度今と同じ、3対8だったんだ。そしてあの日お前達は、そこから大逆転した。つまりこの3対8という今のスコアは、野球の神様がまたあの時のような逆転劇を望んでるって証だ。しかもあの時と違って、今はまだ9回ノーアウトだし吉田はすでに初回から120球以上投げててかなり疲れている。つまりだ、あの時以上に逆転できる可能性は圧倒的に高い。だからお前ら、吉田をボッコボコに打ち崩してまた大逆転してやれ!」

「はい!」