安達弾~打率2割の1番バッター~ 第26章 夏の甲子園千葉大会準決勝 船町北VS千葉修道⑫
7回裏2アウトランナーなしの状況から、3番安達のホームランで同点に追いつくと、続く4番山田が初球をツーベースヒット、さらに続く5番石川が初球をツーランホームランにするという波状攻撃で、船町北はここまでパーフェクトに抑えられていた中原から一挙3点を奪った。
この後中原は、続く6番佐々木をセンターフライに打ち取り、何とかこの回を乗り切った。
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千葉修道 0000001
船町北 0000003
完全に船町北へと流れが向いてきたかに思われた試合展開だったが、千葉修道もまだまだ負けてはいない。8回になっても球威制球共に衰えを見せない粘り強い投球を続ける吉田から、これまた粘り強く食い下がっていく千葉修道打線。1アウト1、2塁から9番中原が送りバントで2アウト2、3塁とチャンスを広げると、続く1番野宮がファールで粘りながら甘い球がくるのを待ち続けた10球目、高めに浮いたスライダーを捉えてセンターとレフトの間を突き破るツーベースヒットを放った。
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千葉修道 00000012
船町北 0000003
再び試合を振り出しに戻した千葉修道だったが、続く2番越智が吉田のチェンジアップで空振り三振に抑えられ、この回の反撃は同点止まりで終わった。
両チーム一進一退の攻防が続く中、伊藤監督はここで思い切った采配をとった。何とエースの中原を、ここにきて2番手ピッチャーの原口に交代させたのだ。
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ほんの数分前。送りバントを決めた後、投球練習に向かおうとする中原の肩を叩きながら、伊藤監督は言った。
「お疲れさん。お前はここまでだ」
「監督、俺まだ投げられますよ」
「でも結構疲れてるだろ。お前には、明日の決勝戦も先発で投げてもらう予定だからな。ここで潰れてもらっては困るんだよ」
「監督……」
「正直言うと、原口に投げさせるよりはまだ疲れが見え始めたお前に続投してもらった方が失点するリスクは少ないと踏んでいる。それでも俺は、ここでお前を交代させる。なぜなら俺達の目標は、この試合に勝つことではなくて、甲子園に出場することだからな」
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明日の決勝戦を見据えて、敢えてここで中原を交代させた伊藤監督。この采配が果たして、吉と出るか凶と出るか。続きはまた次回のお話で。
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