安達弾~打率2割の1番バッター~ 第26章 夏の甲子園千葉大会準決勝 船町北VS千葉修道⑩
7回裏2アウトランナーなし。ここで打席が回ってきた安達は、ただただ目の前にいるピッチャー中原が持つボール1点だけを見つめて集中力を極限まで高めていた。
そんな安達への初球、中原が投じたのは外角低めに投げた三振を取りにいくフォークボールだった。
「ストライク!」
本来ならボールと判定されそうな低めの球だったものの、審判は初回に1度安達が見逃したこの高さのフォークボールをストライクと判定してしまったため、この試合ではギリギリストライクだという基準になってしまっていた。
(これをストライクにしてくれる審判ホント神だわ。ここまで中原がパーフェクトでこられているのも、半分は審判のおかげといっても過言ではないな。じゃあ今度は内角低めにいってみるか)
内角低めへさっきと同じフォークボールを要求する小林に、中原は黙って頷き投球した。
「ボール!」
(さすがに今のはボールか。ワンバンしてたしな。カウント悪くしたくないし、今度はカウントを取りにいくフォークでいくか)
小林のそのサインに、中原は首を振った。
(ならストレートは?)
これにも首を振る中原。
(安達相手には、三振を取りにいく渾身のフォークボール以外は投げたくないってことか。まあ気持ちはわかる。この打席、まだ1度もバットを振ってないっていうのに、何となく安達から凄いオーラをビンビン感じるからな。真正面で向かい合っている中原なら尚更だろう。ようし、お前の望み通り渾身のフォークボールで勝負してやれ)
中原は満足そうに頷くと、渾身の力を込めてフォークボールを投じた。
「ストライク!」
真ん中低めギリギリにフォークボールが決まると、小林は中原に返球してすかさずまた三振を取りにいくフォークボールのサインを送る。中原は頷くより先に両腕を上げて、テンポよく投球を始めた。
(ただでさえ強力なフォークボールを、この早いテンポで続けざまに投げられたら、どんなバッターだって打てる訳ねえ。これで3打席連続三振だ!)
しかしこの時の安達は、ちょっとテンポを早めたくらいでは1ミリも動揺しないくらいの集中力を発揮していた。そしてその集中力は、内角にきた少し高めに浮いたフォークボールを見逃すはずもなく……。
「カキーン!!!!」
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千葉修道 0000001
船町北 000000
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