安達弾~打率2割の1番バッター~ 第25章 開幕! 夏の甲子園千葉大会④

 5回戦まで順調に勝ち上がり、このまま明日の準々決勝も勝てるだろうとチームメイト達が楽観的に考えている中、キャプテンの星は1カ月前に抽選会で会ったあの男のことを思い出していた。

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「悪いが決勝の相手は船町北ではなく、我が六座高校になると決まっている」

「まっ、その内嫌でも耳にするようになるだろうさ。千葉県の頂点に立ち、そして甲子園を制覇することになるであろう六座高校の名前をね。ではサラバだ」

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(六座高校……確か準々決勝で当たる予定だったよな。てことはいよいよ明日対戦になるかもしれないのか。あの自信満々な感じ、すげー不気味だったな。油断してると痛い目を見そうだ。ここはキャプテンとして、しっかり気を引き締めておかないとな)

「みんな油断するなよ。明日の対戦相手について、しっかり研究しておくぞ」

「キャプテンの言う通りだ。これからこの球場で明日の対戦相手が決まる試合が行われる。お前ら集中してしっかり対策を考えるんだぞ」

「はい!」

 船町北ナイン一同は、観客席に移動して次の試合が始まるのを待っていた。

(あれ?)

 スコアボードに貼られた次の対戦カードの高校名を見て、星は目を疑った。

      123456789 計
 原市中央
 専大成宮

(六座高校の名前がないだと? 確か同じDブロックだと思ったけど、見間違いだったか?)

 星は慌ててスマホで情報を確認した。

(六座高校六座高校……あった。やっぱりDブロックだ。試合結果は……5対9で1回戦敗退だと! なんだよ、結局ただ大口叩いてただけの雑魚高校だったって落ちかよ。いや待て、もしかしたら相手高校がダークホースの凄いチームだった可能性もある。えーと、相手の高校は……4対7で2回戦敗退って、やっぱ六座は雑魚だったって落ちか。あームカつく。あんな奴を無駄に警戒して損したな)

 そしてその翌日。

 22日(夏の甲子園千葉大会準々決勝)

      123456789 計
 船町北  0132004   10
 原市中央 0000000   0

 先発の吉田はこの大会で初めて変化球を解禁し、7回を四死球1被安打1とほぼ完璧な内容で無失点に抑え、打線も3回に安達のスリーラン、7回には山田の満塁ホームランが飛び出すなど10得点を挙げての完勝。結局番狂わせなどは起きないまま、絶対王者の龍谷千葉を始め、三街道、千葉修道、そして船町北と前評判の高かった4校が去年と同じく順当にベスト4まで勝ち上がる結果となった。