安達弾~打率2割の1番バッター~ 第25章 開幕! 夏の甲子園千葉大会①

 2017年7月12日。夏の甲子園千葉大会が開幕。そして7月14日。シード権を獲得している龍谷千葉高校、三街道高校、千葉修道高校、そして船町北高校にとっては初戦となる2回戦がそれぞれ別の球場で行われていた。

      123456789 計
 龍谷千葉 52232     14
 二宮商  00000     0

 打っては5回14得点、投げては村沢からエース番号1を奪った山田が5回までをノーヒットに抑える活躍で、龍谷千葉は危なげなくコールド勝ちを収めた。

      123456789 計
 千葉修道 23143     13
 柏第二  00000     0

 千葉修道も負けてはいない。打っては5回13得点、投げてはエース中原がこれまたノーヒットに抑える活躍で、千葉修道も龍谷千葉同様5回コールド勝ちを収めた。

      123456789 計
 小多喜  1000000   1
 三街道  123102✕   9

 三街道はこの初戦、ダブルエースの細田兄弟をどちらも温存するという余裕の采配で、それでも7回コールド勝ちを収めた。

 そして、船町北はというと……。
 
     123456789 計
 浦高  000221100 6
 船町北 22103202✕ 12

 打線こそ12得点と好調だったものの、エースとして登板した先発の吉田が9回を投げて四死球7被安打6と、一見するとパッとしない内容だった。
 
 この試合を見ていた、ある観客達の会話。

「2回戦で6点も取られているようじゃ、船町北のエースは大したことなさそうだな」

「龍谷千葉、三街道、千葉修道、そして船町北が優勝候補の一角と注目されてたけど、どうやら船町北以外の3校に絞られそうだな」

「おいおいお二人さん。君達の目は節穴かい?」

「なんだよおっさん!」

「喧嘩売ってんのかオラ!」

「よく思い出してごらんなさい。今日の吉田君、最後まで得意の変化球を1回も投げていなかったんだよ」

「あっ!」

「確かに……」

「浦高は本来、シード権を獲得していてもおかしくないほどのバッティングに定評のある強豪チームだ。春の大会では2回戦で龍谷千葉と当たってしまい早々に敗退してしまったがな。事実1回戦では、6回コールド勝ちを収めている。その浦高相手に、ストレートオンリーの縛りプレイで9回6失点とは中々馬鹿にできんぞ」

 試合終了後の吉田と西郷の会話。

「今日は急に無理言って悪かったな」

「本当たい。試合直前にいきなりストレートだけでいくとか言われてびっくりしたばい」

「まだまだ新しいストレートのキレも制球も満足できなくてな。これから先の戦いも見据えて、つい実戦練習したくなっちゃったんだよ。それでさ、今日の俺のストレートのキレは比嘉と比べてどうたった?」

「比嘉の通常のストレートが10だとすると……7くらいたい」