安達弾~打率2割の1番バッター~ 第24章 夏の甲子園への秘策⑧

2021年9月22日

(一番懸念していた守備については、比嘉、安達共に全く問題ないどころかかなり良い動きをしていた。川合のファースト守備も、まだ若干のぎこちなさは残るものの許容範囲内だ。この調子なら夏の本番でも何とかなりそうだな。だが唯一の弱点と言えばやはり、バッティングがまだまだ素人レベルの川合と、パワーはあるものの空振りばかりのブンブン丸でお馴染みの比嘉の2人が、同時に打線を連ねてしまうことか。そのせいでどうしても、下位打線の攻撃の流れが2人のところで止まってしまう。これでは大量得点を奪いにくくなるな。まあそれでも、6点は取れたし完封できたし、そこまで深刻な問題ではなさそうだ。今回初めて試したこの作戦、結果は概ね成功と言って良さそうだな)

 ダブルヘッダーの1試合目が終わった後、鈴井監督は簡単に試合の総括をした後、次の試合相手についての説明を始めた。

「次の練習試合の相手は、坂戸第一高校。去年の夏の埼玉大会では2回戦負けだが、今年の春季大会ではベスト4と絶賛急成長中の勢いのあるチームだ。さっきも言った通り、吉田はあまり勝ちにこだわり過ぎず、色々試してみろ。だが野手は別だ。初戦に続いて2連勝できるよう気合入れていけよ!」

「はい!」

(とは言ったものの、夏の大会の予選までもうあと1カ月ちょっとしかない。吉田、早いとこ復調の兆しを見せてくれよ。比嘉に投球制限が課されて連投もできない以上、お前にはエースとして1試合投げ切れるように復活してもらわなければ困るからな)

 そんな願いを込めて吉田をマウンドに送り出した鈴井監督だったが、結論から言うと吉田の投球は散々な結果に終わった。

      123456789 計
  船町北 110201202 9
 坂戸第一 02031202✕ 10

 吉田は8回を投げて四死球9被安打10の10失点。変化球のコントロールが終始安定せず、毎回のようにフォアボールを出す。そしてカウントを整えるためのストレートを狙われて長打を打たれるという悪循環が続き、まさかの二桁失点。打線が奮起するもあと1歩届かず、船町北高校は坂戸第一に敗北。この日の船町北のダブルヘッダーの練習試合は、1勝1敗という結果に終わった。