安達弾~打率2割の1番バッター~ 第24章 夏の甲子園への秘策④

「あのー監督、それなら俺ピッチャーじゃない時は外野守ってもいいっすか? 小学生の頃と中学でも1年の時に少しだけやった経験があるんすよ」

「そうか。だがブランクもあるだろうし、外野守備を今からやって見せてもらおうか」

「ちなみに俺は、ピッチャー以外どこも守ったことないっすよ」

「わかってるよ。川合にも試しに1度、外野の守備をやってもらうぞ。センターはキャプテンの星がいるし、ライトの山田も貴重なバッターだ。となると必然的に守るとしたらレフトか。滝沢には悪いが途中から外れてもらうか」

 レフトの位置にまずは比嘉が入ると、鈴井監督自らレフト方向にノックをした。比嘉は数年ぶりとは思えないほど軽快な動きで打球を処理していく。

(なかなかうまいじゃないか。だが送球はどうかな?)

「比嘉、次はキャッチした後ホームに向かって投げてくれ」

 レフトフライを打った鈴井監督は、すぐさまグローブを付けて比嘉の返球に備えた。フライをキャッチした比嘉は、無駄のない動きで流れるように送球する。

「パン!!」

(痛ってー。あの距離からまさかのノーバン送球かよ。コントロールも完璧だな。これなら安心してレフトを任せられる。いや、この送球ならより肩の強さを求められるライトを守ってもらった方がいいかもな)

「じゃあ次は川合がレフトについてくれ」

 鈴井監督は何本もレフト方向へフライを上げていくが、川合は目測を誤って落球を繰り返した。

(未経験だから仕方ないにしても、こりゃああまりにも向いてなさそうだな。ちなみに送球はどうかな? まあ予想はつくが)

「川合、次からはキャッチした後ホームに向かって投げてくれ」

 レフトフライを打った鈴井監督は、すぐさまグローブを付けて川合の返球に備えた。川合はフライの目測を誤り1メートル程手前で落とした後、その球を拾ってホームへと送球した。球はサード方向に2メートル程、そして高さは3メートル程上に逸れていった。

(肩の強さは認めるが……あまりにもノーコン過ぎる。このレベルの奴を今から外野手としてマシなレベルまで鍛えるとなると、あまりにも時間が足りな過ぎる。他に川合が出来そうなポジションと言ったら……)

「川合、次はファーストをやってみてくれ」