安達弾~打率2割の1番バッター~ 第24章 夏の甲子園への秘策⑭

 2017年6月21日。この日千葉県のある会場で、夏の甲子園予選の抽選会が行われていた。船町北からは、キャプテンの星がくじを引きにきていた。

 抽選の結果、船町北高校はDブロックとなった。星はくじを引き終わったあとも、他の高校がどこのブロックにいくのか注目していた。

(龍谷千葉は……よし、Aブロックだ。そして三街道は……よし、Bブロックだ。これで決勝までこの2校とは当たらないことが確定した。できればこの調子で、千葉修道にもAかBブロックにいってもらいたいところだが……くそ、Cブロックか。これでうちが勝ち続けると仮定すると、準決勝で千葉修道、そして決勝で龍谷か三街道の勝った方と当たることがほぼ確定した。ブロックこそ違うが、去年と同じ組み合わせだな)

 そんなことを考えていた星の元に、ある1人の男がやってきた。

「よう星!」

「お前は……誰でしたっけ?」

「おいおいお前までそんな反応かよ。角田だよ角田。角田聡。三街道の」

「あー思い出した。確か一方的に黒山先輩をライバル視している痛い人でしたよね」

「そうそう痛い人でーすってコラッ! なめてんじゃねーぞ。今年こそは龍谷千葉を倒して、決勝ではお前らも倒して、うちが甲子園に出場してやるからな。覚悟しておけよ」

「ちょっと待ったー」

 ここでいきなり、見ず知らずの高校生が割り込んでいた。

「悪いが決勝の相手は船町北ではなく、我が六座高校になると決まっている」

「六座高校? 聞いたことねえな」

「まっ、その内嫌でも耳にするようになるだろうさ。千葉県の頂点に立ち、そして甲子園を制覇することになるであろう六座高校の名前をね。ではサラバだ」

 不敵な笑みを浮かべながら、その高校生は立ち去って行った。

「変な邪魔が入っちまったからもう1度言うぞ。今年こそは龍谷千葉を倒して、決勝ではお前らも倒して、うちが甲子園に出場してやるからな。覚悟しておけよ」

 そう言い残して、角田も立ち去って行った。

(角田の奴は相変わらずだな。それにしても、六座高校って俺も初めて聞いたな。えーと、うちと同じDブロックの準々決勝で当たる予定なのか。今まで龍谷、三街道、千葉修道の3校ばかりに注意がいっていたが、当然他の高校だって甲子園を目指して毎日練習を重ねていることに変わりはない。今一度気を引き締めていかないとな)