安達弾~打率2割の1番バッター~ 第22章 春季大会3回戦 船町北VS千葉修道⑨
越智の打球は左中間を破るツーベースヒットとなった。
(今の打ち方を見るに、浮き上がるストレートを完全に捨てて普通のストレート1本に絞って狙っていたみたいばい。ならば……)
続く3番バッター立花に対して、キャッチャー西郷は2球続けて浮き上がるストレートを比嘉に投げさせた。立花はそれを、2球とも見逃した。
(この見逃した方……やっぱりこいつも普通のストレート狙いたい。ならば3連続で……)
西郷は3球目も浮き上がるストレートのサインを出した。
「カキーン!!!」
立花の打球は右中間を破るツーベースヒットとなり、千葉修道は6回まできてようやく念願の初得点を上げた。
(さすがに3球も連続で同じ球を投げられたら、狙い球でなくても体が反応するわ。俺達千葉修道打線を甘くみたな。さあここからさらに反撃していくぞ!)
そして迎えるバッターは、4番の真山。
(さすがは千葉修道打線。比嘉の2種類のストレートをもってしても対応してくるたいか。ばってん、3種類ならどうたいか?)
真山に対する初球、比嘉は内角低めへ浮き上がるストレートを投じた。
「ストライク!」
(なるほどな。確かに凄まじい伸びだ。まるで浮き上がってくると錯覚してしまうほどにな。だが、1度見てしまえば後はこっちのもんだ。この浮き上がるストレート、普通のストレートに比べて球速が遅い。スピードガンでは20キロほど違うみたいだが、体感では10キロ程度の差しか感じないな。並みのバッターならこの微妙な球速の違いを瞬時に見極めて対応するなど困難だろうが、俺の選球眼をもってすれば可能だ)
そんな真山に対する2球目に、西郷は公式戦では初のお披露目となる比嘉の3番目のストレートを要求した。
(やっと投げさせてもらえる。この3種類のストレートが使えて初めて、俺のピッチングが完成する。これでもうこれ以上の得点はさせねえぞ)
比嘉が投球モーションに入る。
(伸びるストレートか、それとも普通のストレートか。どっちがこようともホームランにしてやるぜ!)
そう自信満々で構える真山に比嘉が投じた球は、ど真ん中に向かっていた。
(普通のストレートならここから高めに伸びてくる。浮き上がるストレートなら、さらに高めに伸びてストライクゾーンから外れる。果たしてどっちだ? あれっ? どっちが区別がつきづらいな。しゃーない。普通のストレートに山を張ってスイングするか)
比嘉が球を投じてからのほんの一瞬の内に、真山はこのような思考を瞬時に叩き出してストライクコースの高めに向けたスイングをしたが、比嘉の投げたストレートはそこからお辞儀をしてストライクゾーンの低めを通過した。
「ストライク!」
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船町北 000211
千葉修道 000001
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