安達弾~打率2割の1番バッター~ 第22章 春季大会3回戦 船町北VS千葉修道⑦

「1点で止めたかったんですが……すみません」

「いや、中原は良く投げてくれた。全てはキャッチャーの俺の責任だ」

「いやいや、俺の力不足です」

「お前らたかが2点取られたくらいで何深刻そうにしてんだよ」

「たったの2点くらいすぐに」

「俺達で取り返してやるぜ」

 船町北打線に2点を先制されて落ち込んでいた中原小林バッテリーをそう言って励ましたのは、千葉修道の2番、3番、4番を打つ越智、立花、真山の3人だった。

 4回裏。この回の先頭は、2番バッターの越智。

(1打席目は予想以上のストレートにびっくりしちまったが、いくら凄いといっても所詮はストレート1本しか投げられないピッチャーだ。ストレートの弾道さえしっかり見極めれば、必ず打てるはずだ)

 初球、比嘉が投じた外角高めへのストレートに空振りする越智。

「ストライク!」

(まだボール1個分下を振ってるな。次こそは当てる!)

 2球目、内角にきたストレートを打ちにいく越智。

「カーン! ボン!」

 真後ろのバックネットに、ファールボールがぶつかる。

(よし、当たった。タイミングはほぼ完璧だった。あとはもう少しだけ微調整すれば……)

(二巡目でもう当ててきたばい。しかも、タイミングまでバッチリ。さすがは千葉修道打線たい。でも、こっちのストレートならどうたいか?)

 3球目。比嘉が投じたストレートは、地面につきそうなくらい低めに向かっていた。越智がバットを止めて見送ろうとしたその時、球が急激な上昇を始めた。

「ストライク! バッターアウト!」

 バットを持ったまま、しばらくその場に固まる越智。

「君、早くベンチに戻りなさい!」

「あっ、すみません」

 越智は慌ててベンチに戻りながら、今見たばかりの信じられない光景を思い出していた。

(地面につきそうなくらい低いストレート。絶対にボールになると確信してバットを止めた。それが突如として浮き上がってきた。俺は今、夢でも見ていたのか?)

「ストライク! バッターアウト!」

 越智と同じく、見逃し三振でベンチに戻ってきた3番バッターの立花に、越智は確認する。

「なあ立花。あいつが投げてきた球の中にさ、今までのストレート以上に異常な浮き上がり方をする球なかったか?」

「お前も見たのか……どうやら俺の見間違いではなかったみたいだな」

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 船町北  0002
 千葉修道 000