安達弾~打率2割の1番バッター~ 第22章 春季大会3回戦 船町北VS千葉修道③
1回の裏、千葉修道の攻撃。
先発の比嘉が投げた初球のストレートを、1番バッターの野宮はじっくりと見ながら見送った。
「ストライク!」
(かなり伸びてくるストレートだな。中原のストレートと比べても引けを取らない)
2球目。比嘉が投げたストレートを、バッターはまた見送る。
「ボール!」
(外角低めギリギリのコースか。ストライクと言われてもおかしくなかった。スピードは130キロ代の後半。さっきは内角低めギリギリだったし、コントロールもまあまあ良さそうだ。このピッチャー、並みのバッターじゃ苦戦するだろうな。だが……)
3球目。比嘉が投げた内角高めへのストレートを、バッターはフルスイングで捉えた。
「カキーン!!!」
ライト方向へと引っ張った打球は、ライトを守る山田の頭を超えてフェンス直撃のツーベースとなった。
(ホームランかと思ったけどツーベース止まりか。確かに中々のストレートだが、他に変化球もないんじゃ俺達の打線は抑えられないぜ)
「おい比嘉! ペース配分なんか考えんなたい!」
キャッチャーの西郷がそう叫ぶと、比嘉は黙って頷いた。
(ペース配分ってことは、今の球はまだ本気で投げてないってことか? いやいや、ネクストバッターズサークルから見てた感じだとかなりきてたぞ)
2番バッターの越智は、西郷が叫んでいるのを聞いてそんなことを考えながら打席に上がった。
初球。比嘉が投じたストレートは真ん中の高めにきた。
(えっ!?)
「ストライク!」
(何だ今の球……160くらい出てね?)
しかし、電光掲示板に表示されていた数字は141キロだった。
(機械が故障してるのか? そんな遅い訳ないだろ)
2球目。内角にきたストレートに、越智は手が出ない。
「ストライク!」
そして3球目。外角高めにきたストレートにスイングするも、ボール2、3個分も下を振ってあえなく空振り三振に終わった。
(あんなストレート……初見で打てる訳がねえ。やっぱり野宮の打席では本気で投げてなかったってことか)
その後も千葉修道打線は、比嘉のストレートにバットを当てることすら出来ないまま三者連続三振に終わった。
「千葉修道、なかなかやりますね」
「三者連続三振に抑えておいて、何言ってるたいか?」
「だって、最初の予定ではペース配分を考えて軽めに投げるつもりだったじゃないっすか。それがいきなり初回から普通に投げることになるとは」
「軽く投げても抑えられた西森や柏大と、千葉修道を一緒にするなたい」
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船町北 0
千葉修道 0
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