安達弾~打率2割の1番バッター~ 第22章 春季大会3回戦 船町北VS千葉修道②

2021年8月1日

 船町北高校スターティングメンバー

 1 星(中)
 2 野口(二)
 3 安達(一)
 4 山田(右)
 5 石川(三)
 6 滝沢(左)
 7 佐々木(遊)
 8 西郷(捕)
 9 比嘉(投)

 千葉修道スターティングメンバー

 1 野宮(中)
 2 越智(右)
 3 立花(二)
 4 真山(一)
 5 石塚(左)
 6 滝村(三)
 7 野島(遊)
 8 小林(捕)
 9 中原(投)

 1回表、船町北の攻撃。

 1番バッターの星は、2球続けて中原が投げたストレートを見送った。

(球速は130キロ代だが、それ以上に速く感じる。なるほど、監督が言っていた通りかなりキレの良いストレートだな。だが、これも監督が言っていた通りだが……)

 中原の3球目、真ん中低めに球がくる。

(比嘉のストレートに比べたら、大したことはない)

 バットを振る星。しかし、途中までストレートと同じ軌道を描いていた球が、急に落ちた。

(何っ! そこから落ちるのか)

「ストライク! バッターアウト!」

(くそっ、中々手強いフォークボールだな)

 続く2番バッター野口は、ストレートを捉えきれず追い込まれた後、セーフティーバントを試みるも中原のフォークにバットを当てることすらできずアウトとなった。

 そして、3番バッター安達の打席がきた。

(こいつは要注意バッターだ。半端な配球では抑えられないぞ)

 千葉修道のキャッチャー小林は、今まで追い込んだ後の決め球として中原に投げさせてきたフォークボールを、今度は最初から2連続で投げさせた。

「ストライク!」

「ストライク!」

 1球目も2球目も、内角の低めにきたフォークボールを安達は見逃した。

(あの見逃し方……恐らくストレート狙いだな。ならば3球目もフォークでいく)

 3球目、小林は外角低めへミットを構えるも、中原のフォークは少しだけ高めに浮いた。それを安達は見逃さなかった。

「カーン!!!!」

 安達の打球は高く高く上空に打ち上がった。

(あっぶねー。ちょっと高めにいって焦ったけど、打ち損じてくれて助かったぜ)

 中原はほっと一息つきながら打球を目で追いかけた。上空に打ち上がった打球が、どんどん小さくなっていく。

(あれ、全然落ちてこねえぞ。内野フライかと思ったけど、外野までいきそうだな)

 センターを見ると、フライを見上げながら後ろへ歩きながら下がっていたが、途中で慌てて走り出した。

(えっ、おいおい間に合うか?)

 中原が心配そうに見つめる中、センターは何とか打球に追いつきフライをキャッチするも、勢い余ってセンターフェンスにぶつかってしまった。

「アウト!」

 フェンスにぶつかっても、センターはボールをしっかりとキャッチしたままだった。

「ちっ、ダメだったか」

 そう悔しがる安達はなんとすでに、セカンドベースを回っていた。それを見ていた小林は、安達の驚異的なパワーとその走力に驚かされていた。

(あの打ち取った当たりがあわやホームランかよ。そしてもしも今センターが落球していたら、ランニングホームランになっていた所だぞ。ホント危なかったな。よし、次から安達は絶対に敬遠しよう)

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 船町北  0
 千葉修道