安達弾~打率2割の1番バッター~ 第22章 春季大会3回戦 船町北VS千葉修道⑫
「カキーン!!!!」
3番の立花に続き、4番の真山にもホームランが飛び出した。レフトスタンドの上段に飛び込む特大の二者連続ホームランに、ついさっきまで試合を諦めかけていた伊藤監督は、すっかりやる気を取り戻していた。
「あと5点だ! お前らなら追いつけない点差じゃないぞ!」
一方の鈴井監督は、まだまだ余裕だった。
(さすがの比嘉も、9回までくると疲れてきたか。まっ、あと2アウト取ればゲームセットだしまだ5点差もある。大丈夫だろう)
そう高を括っていた鈴井監督だったが、その直後、ベンチに向かって合図を送るキャッチャーの西郷を見て突然慌て始めた。
(何だって! ピッチャーを交代しろだと?)
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今からほんの1分前。比嘉が2本目のホームランを打たれると、西郷はすぐにタイムを取ってマウンドの比嘉の元に向かった。
「おい比嘉、お前どこか痛めてるんじゃないたいか?」
「げっ! 何でわかったんすか?」
「やっぱりそうたいか。最初は疲れただけかと思ったばってん、微妙にフォームが崩れてる感じがしたばい。どうりでキレがなくなった訳たい」
「前の回くらいからちょっと肩の痛みが気になって。あっ、でもあと2アウトだけなんで全然投げれますよ」
「馬鹿を言うなたい! 今無理して大きな怪我になったらどうするたいね。すぐにマウンドを降りるたい」
そう言って西郷は、ベンチにいる鈴井監督に合図を送った。
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(まだ5点差もあるのにここで交代させろってことは、ただの疲れではなさそうだな。てことはまさか、怪我でもしたのか……)
鈴井監督はこの瞬間、比嘉の投球データを分析してもらった戸楽博士の言葉を思い出していた。
『比嘉君が故障しないよう、しっかり注意して見守るんじゃぞ。あの子は将来必ず、日本球界を背負って立つ投手になるじゃろうからな』
(博士の言う通りだ。よし、今すぐ交代しよう。とは言っても、今日は最後まで比嘉でいくつもりだったからな。吉田にも川合にも全然準備させてないぞ。果たして、この状況でどちらに投げさせるべきか……吉田は明日の先発予定だし、できれば温存しておきたい。かといってフォアボールを連発するリスクがある川合をここで出すのもリスキーだし、うーん……)
果たして、鈴井監督の決断はいかに。
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船町北 000211121
千葉修道 000001002
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