安達弾~打率2割の1番バッター~ 第22章 春季大会3回戦 船町北VS千葉修道⑩

(はっ? 何だ今の球は。明らかに落ちてたよな。フォーク系の変化球か? いや、そんな感じの変化ではなかった)

 ここで電光掲示板に目を向けた真山。

(150だと? 確か今までのストレートは最速でも140キロの前半だったはず。ということは、今の球は本気で投げたストレートということか。でもストレートならなぜここまで落ちるんだ?)

 真山が色々と混乱している間に、比嘉は3球目の投球モーションに入る。

(ダメだ。頭の整理が追い付かない。取り合えず今の球は忘れて今まで通り2種類のストレートに絞って対応しよう)

 比嘉が投じた3球目を見て、真山はその球速から瞬時に浮き上がるストレートだと判断した。

(伸びるストレートなら、ストライクゾーンの真ん中くらいの高さまで伸びてくるはずだ。そこを叩く!)

 真山がそう迷いなくフルスイングしたバットの上を、比嘉のストレートが通り過ぎていった。

「ストライク! バッターアウト! チェンジ!」

(何だと! 俺が想定した以上に球が伸びてきた。あの野郎、ここにきてさらに進化したストレートを投げてきやがったな。それに、2球目のストレートの謎もまだ解けていない。くそっ、底が見えない。何て恐ろしいピッチャーなんだ)

 比嘉がさらに進化したストレートを投げてきたと感じた真山だったが、実際のところ、比嘉が3球目に投げた浮き上がるストレートは、今までとほぼ同じ球質だった。しかし、その直前に投げられた落ちるストレート(回転数が少なく回転軸の角度のズレが大きい棒球)を目にしたことで、その後に投げられた浮き上がるストレート(回転数が多く回転軸の角度のズレが小さいキレのある球)の伸びがより一層際立って感じられたというのが事の真相だ。

 7回以降も、比嘉は普通のストレートと浮き上がるストレート、そして落ちるストレートの3種類を織り交ぜた投球を続けた。普通のストレートと浮き上がるストレートを攻略しつつあった千葉修道打線だったが、そこに落ちるストレートが加わったことで、さっきの真山と同様に今まで攻略しつつあったストレートまで全く打てなくなってしまった。

 一方の船町北打線は、7回以降も足を生かした攻撃で着々と追加点を上げていき、その点差は7点にまで広がっていた。

      123456789
 船町北  000211121
 千葉修道 00000100