安達弾~打率2割の1番バッター~ 第22章 春季大会3回戦 船町北VS千葉修道①
2017年4月29日。春季大会3回戦、船町北VS千葉修道が始まろうとしていた。
千葉修道のベンチでは、過去2度に渡って船町北相手に屈辱的な敗北を喫してきたリベンジを果たすため、伊藤監督が選手達に檄を飛ばしていた。
「打撃破壊。7年前、初の甲子園出場を果たしたうちの打線に付けられた称号だが、この称号はもうすっかり龍谷に奪われてしまった。だが俺はまだ諦めていない。いつか龍谷相手に打ち勝ってうちこそが元祖打撃破壊だと世の中に知らしめてやりたい。そう思っている。しかし、去年そのうちの野望を2度も打ち砕いたのが船町北だ。それも元祖打撃破壊のうちが1点も奪えないまま完封負けを食らうという屈辱的な形でだ。こんな屈辱を、お前らは二度と味わいたくないよな?」
「はい!」
「今日の相手の先発は比嘉とかいうピッチャーだ。初戦の試合映像を見ても分かる通り、持ち球はストレートのみ。だが決して油断はするな。映像で見ても分かるくらい、かなりキレのいいストレートだ。球速もなかなか速い。並みの高校生なら、打つのにかなり苦労することだろうな。だが、血のにじむようなあの練習の日々を乗り越えてきたお前らなら打てるはずだ。それに、うちにはもっとキレの良いストレートを投げる中原がいるからな。中原、今日の先発は頼むぞ!」
「はい! 任せてください」
一方その頃、船町北ベンチ。
「千葉修道の先発は中原だ。去年の秋頃から頭角を現してきた選手で、持ち球はストレートとフォークのみだ。しかし、このストレートとフォーク、どちらもキレが抜群でコントロールも良い。中々手強い投手だが、俺はそれほど心配していない。なぜなら、フォークはともかくストレートなら、うちの比嘉の方が数段キレが良いからな。比嘉のストレートを見慣れているお前らなら問題ないだろう。フォークは極力捨てて、ストレートを狙っていこう」
「はい!」
「そして千葉修道と言えば強力打線が脅威だが、比嘉、今日の調子はどうだ?」
「うーん……普通っすね」
「そんなんで大丈夫か?」
「大丈夫っすよ。普通に投げられれば多分抑えられるはずっす」
「凄い自信だな。期待してるぞ」
「はい!」
こうして、春季大会3回戦、船町北VS千葉修道が始まった。
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