安達弾~打率2割の1番バッター~ 第21章 春季大会開幕⑨

 2017年。4月22日。比嘉が先発した春季大会の初戦は、船町北高校の圧勝で終わった。

     123456789 計  
 柏大  00000     0 
 船町北 5204✕     11

 そして4月23日。吉田が先発した春季大会の2回戦は、これまた船町北高校の圧勝で終わった。

     123456789 計  
 船町北 00300124  10 
 西金  00010001  2

 この2試合の結果を見た鈴井監督は、3回戦で予想通り勝ち上がってきた千葉修道との試合で比嘉と吉田のどちらを先発させるかで頭を悩ませていた。

(比嘉は5回を投げて無失点。12奪三振を奪い許した安打はポテンヒットの1つのみ。四球は1つだけで球数はわずか61球という文句の付けようがない内容だ。一方の吉田は、8回を投げて2失点。四死球0、被安打6の8奪三振とそこまで内容は悪くはないが、比嘉と比べてしまうともどうしても物足りなく感じてしまう。しかし、比嘉にも懸念材料がない訳ではない。一巡目に打者9人中8人から三振を奪ったのに対して、二巡目では打者8人中4人と奪三振数が半分に減っている。まあ比嘉の持ち球は回転数が違うとはいえストレートのみだからな。回を追うごとに対応されやすくなるのは仕方がない。今回はたまたま5回でコールド勝ちできたから無失点で終わったが、もしも9回まで投げて打順が3巡目4巡目と回ってきた時、それでも抑えることができるのかはまだ未知数だ。その点、変化球も経験も豊富な吉田は長いイニングを投げても安定感がある。うーん……)

 鈴井監督は数時間悩んだ後、結論を出した。

(よし決めた。3回戦の千葉修道戦では比嘉を先発させる。そこで比嘉を9回まで投げさせてみて、どれだけ抑えられるのか、千葉修道打線を試金石にする。今大会の千葉修道はここまで平均得点17と例年にも増して絶好調だ。龍谷の平均得点20と比べたら少し劣るが、それでも十分凄い。もしも明日このノリに乗っている千葉修道打線相手に比嘉が9回を2、3失点以内に抑えられるようなら、龍谷打線相手でも通用すると期待できそうだな)