安達弾~打率2割の1番バッター~ 第20章 特待生 比嘉流星の入部⑧
「みんな、ストレッチは終わったな。ではいつも通り、ベースランニングのタイム測定をする。比嘉、うちは足を生かした機動力野球を目指して走力アップの練習に力を入れている。ピッチャーと言えども、9人目のバッターだ。だからもちろん、お前にも参加してもらうぞ」
「はい!」
(足を生かした機動力野球か……俺に向いてるかも)
「じゃあ今日は比嘉から1年、2年、3年の順に走ってもらおうか」
(おっ、いきなりか。中学の頃は中2の時点でチーム1足が速かった。中2の途中から試合に出してもらえなくなったあとも、投球練習以外はとにかく走りまくっていた。そのおかげもあってか、中3の頃には陸上部の奴らにも負けないくらい足が速くなっていた。ようし、このベースランニングで俺の走力を先輩達と監督に見せつけてやるぜ)
「位置について、よーいドン!」
軽快な走りを見せた比嘉は、本塁に帰るとすぐにタイムを確認した。
「何秒ですか?」
「14.70だ」
(よし、これなら1番、いや、さすがに星部長には勝てないか。あの人かなり足速いからな。それでも、チームで2番目くらいのタイムは出せたんじゃねえかな)
「おー結構速いじゃん」
「投球だけじゃなくて足まで速いのかよ」
「すげー特待生が入ってきたな」
期待の新入部員の走りを称える先輩達。
(先輩達の反応も上々だ)
「でも、そのタイムじゃあ2番目くらいかな」
「そのくらいだろうな」
(やっぱり、星部長はもっと速いのか)
「次は安達だな。位置について、よーいドン!」
(安達先輩って、こんなに足速かったっけ? ていうか、下手したら俺より速いかも)
「安達、14.51だ」
(速っ! もしかして、チーム1足が速いのって、星部長じゃなくて安達先輩だったのか?)
「安達、今日はタイムいまいちだな」
「最後、ちょっと膨らみ過ぎてたからな」
(えっ、今のタイムでいまいちってことは……いつもはもっと速いってことか?)
「次は伊藤。位置について、よーいドン!」
(この人もかなり速いな)
「伊藤、14.87」
(あぶねー何とか勝てたか)
「やっぱり比嘉に負けたか」
「伊藤は相変わらず鈍足だな」
(このタイムで鈍足扱いって……どういうこと?)
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