安達弾~打率2割の1番バッター~ 第20章 特待生 比嘉流星の入部④

 安達弾VS比嘉流星。2打席目の勝負は、またもや安達が1球も球に当てることすらできないまま2ストライクまで追い込まれていた。

(安達先輩……思ってたよりも大したことなかったな)

 比嘉は少しガッカリしながら、3球目を投じた。

「カキーン!!!」

 ついに安達のスイングが、この日初めて比嘉の球を捉えた。しかし、打球は3塁線を切れるファールとなった。

(やっと当たったぞ。後はタイミングを微調整すれば、何とかヒット、いや、絶対ホームランにしてやる)

(安達先輩……やっぱり凄いや)

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 それは、鈴井監督が沖縄で比嘉をスカウトした後のこと。

 比嘉は自分が来年入部する船町北高校について詳しく調べてみようとネットで検索すると、龍谷千葉高校との甲子園予選決勝の動画を見つけた。

(すげー!)

 比嘉がその試合を見て1番驚いたのは、龍谷千葉打線を9回途中まで無失点に抑えた黒山ではなく、全打席敬遠された安達の方だった。

(これだけ警戒されるって……この安達って人、どんだけ凄いバッターなんだ?)

 それから比嘉は、安達が中学3年生の頃にバッティングセンターで打っているYoutuberが上げた有名な動画から、一般人が撮影していた地方予選の動画まで、安達がバッティングをしている動画をたくさん見てきた。そして、比嘉は確信した。今の高校野球界で1番のバッターは、来年からチームメイトになるこの安達だと。

(来年このチームに入部したら、安達先輩と好きなだけ対戦ができる。スゲー楽しみだな)

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(そして入部して早々に、夢にまでみた安達先輩との対戦がいきなり実現した。正直滅茶苦茶嬉しかった。それなのに、意外とあっさり抑えられちゃたもんだから、正直拍子抜けしちゃってた。でも……)

 4球目。大きく振りかぶる比嘉の表情には、自然と笑みがこぼれていた。

(安達先輩となら、これから甲子園、そしてプロを一緒に目指す良いライバルになれそうだ)

「カキーン!!!!」