安達弾~打率2割の1番バッター~ 第20章 特待生 比嘉流星の入部㉑

 投球データ分析に急遽行くことになった新入部員の3人は、そこで先輩達や同級生の特待生比嘉との実力差をまざまざと見せつけられることとなった。

 帰りの車の中、新入部員の3人はある決意を固めていた。

(このチームでエースを目指すなんて、とてもじゃないけど無理だ)

(こうなったら俺)

(やっぱり野手のレギュラーを目指そうかな)

 昼過ぎ頃。車が船町北高校に到着すると、投手の6人もチームの練習に合流した。

「さっきデータ測定のためにみんな結構投げたから、今日は投球練習はそこそこにして守備やバッティングの練習中心でいくぞ」

「はい!」

「監督、内野の守備練習に参加してもいいですか? できればセカンドで」

 そう言いだしたのは、新入部員の佐藤だった。

「お前、ピッチャー志望じゃなかったのか? まっ、複数のポジションをこなせた方が便利だしやっといて損はないな。いいぞ」

「監督、僕も内野の守備練習に参加したいんですが? できればサードで」

「僕は外野の守備練習いいですか?」

 そう言いだしたのは、新入部員の田中と渡辺だった。

「おう、いいぞ。やれやれ」

 実はこの3人、シニア時代はピッチャー以外にもそれぞれ佐藤はセカンド、田中はサード、渡辺は外野のポジションを経験していた。いやむしろ、ピッチャーよりもそちらの方が本職と言ってもいいぐらいだった。

(ピッチャーの選手層が薄そうだからピッチャーでエースを目指そうと思ってたけど、やっぱり慣れてるセカンドで)

(サードで)

(外野手でレギュラーを目指すぞ!)

 しかし、いざ守備練習が始まると、3人はそこでも先輩達との実力差を見せつけられることとなった。

(うわっ、あの打球にも追いつくのかよ。送球も正確だ。恐らくこの人、セカンドのレギュラーだな。うわ、こっちの先輩もスゲー)

(あの強い当たりのノックを平然と捕ってやがる。高校野球でサードを守るとなると、これくらいの打球にも対応できなきゃダメなのか)

(ここの外野手、みんな足が速いな。守備範囲が広すぎる。ホームランでも打たない限り、外野に飛んだ打球は全部捕られそうな勢いだぞ)