安達弾~打率2割の1番バッター~ 第20章 特待生 比嘉流星の入部②

「先輩、ルールはどうします?」

「3打席勝負して、2打席以上出塁を許したらお前の負け。これでどうたいか?」

「そのルールじゃ俺に有利すぎません?」

「それくらいのハンデがないと勝負にならんたい」

「あのー勝負するの俺なんですけどー」

 安達が声を挟むも、無視して2人は話しを進める。

「まあいいっすよ。この勝負に勝ったら、もう2度と変化球覚えろとか強要してこないって約束してくれますよね?」

「ああ、男に二言はないたい」

 こうして、安達弾VS比嘉流星の3打席勝負が始まった。

「あのー先輩、勝負の前に何球か投げていいっすか。肩作りたいんで」

「もちろんたい。好きなだけ投げるたい」

「じゃあ投げますよ」

 比嘉はセットポジションから、キャッチボールのような軽い球を3球ほど投じた。

(あれだけ大口を叩く割には、普通の球たいね)

 次に比嘉は、大きく振りかぶるオーバースローで球を3球ほど投じた。

(少しスピードが増したが、別に何てことない球たい)

「先輩、こっからちょっとだけ力入れて投げるんで、ちゃんと集中して捕ってくださいよ」

(こいつ、どこまで生意気たいか。ストレートしかこないとわかってるたいに、捕れない訳が……)

「パン!!」

 真ん中高めにきた比嘉のストレートを、西郷はキャッターミットの先っぽギリギリでなんとかキャッチした。

(何たいか今の球は! 危うく後ろに逸らしそうだったばい)

(へー今のストレートを初見で捕るとは。中々やるじゃん)

 続けて2球、3球と比嘉のストレートを受ける西郷。

(比嘉のストレート、もしかしたら黒山先輩並みかもしれんたい)

「先輩、もう肩できたんで始めましょうか」

(でも、例え黒山先輩並みのストレートを投げられたとしても、安達は抑えられんたい)

「安達、打席に立つたい」

(確か俺、1年前にもこんな感じで黒山先輩と勝負したんだよな。何か懐かしいな)

 ギラギラと闘志を燃やす比嘉と西郷の2人とは対照的に、昔の記憶を思い出してほっかりとしながら、軽い気持ちで打席に入った安達。

「配球は全部お前が決めて、好きなコースに投げてくるたい。打たれたあとで、安達の得意なコースにわざと配球したとか難癖付けられたくないからたいな」

「了解っす」

 比嘉は一息ついた後、オーバースローで大きく振りかぶってから勢いよく右腕を振り降ろして、3打席勝負の1打席目の初球を投じた。。

「パン!!」

 外角高めへのストレートを、西郷はまたもやキャッチャーミットの先っぽギリギリでキャッチした。

(こいつ、さっきの球はまだ本気じゃなかったばいか)

「ストライク!」

 この1球が、さっきまで軽い気持ちで打席に立っていた安達の闘争心に火をつけた。