安達弾~打率2割の1番バッター~ 第20章 特待生 比嘉流星の入部⑱
「つまり、実際に投げてみないと通用するか分からないって訳か。監督、これはすぐにでも実戦で俺を試しておくべきじゃないっすか?」
「わしも賛成じゃ。川合君がどの程度通用するのか、研究者として純粋に興味がある」
「戸楽博士にまで言われたらしょうがないか。よし、考えておこう」
「監督、約束ですよ」
「では最後に、比嘉君のストレートについてじゃが、わしは未だに疑っておる。機械の測定ミスではないかとのう」
「つまり、それくらい凄い結果が出たということですよね」
比嘉本人以上に、鈴井監督は前のめりになって戸楽博士の説明を聞いていた。
「ああそうじゃ。まずは1番速いストレートについてじゃが、球速は平均151キロ。1分当たりの平均回転数が1950程度。SPVに換算すると13。そして平均回転軸は30度。川合君ほどではないが、立派な棒球じゃ」
あからさまにガッカリとした表情を見せる鈴井監督と、少しイラっとした表情を見せる比嘉。
「そして2番目に速いストレートじゃが、球速は平均140前後。1分当たりの平均回転数が2400くらい。SPVに換算すると17を超える。この数値は、プロでもトップレベルじゃ。しかも、平均回転軸はわずか5度。これに関しては、プロでもほとんどお目にかかれないレベルじゃのう」
あからさまに嬉しそうな表情を見せる鈴井監督と、少し笑みがこぼれる比嘉。
「そして1番遅いストレートじゃが、わしが1番驚かされたのはこれじゃ。平均球速が120前後なのに対して、平均回転数が2300。SPVは19を超える。これはわしも聞いたことのないレベルじゃ。しかも、平均回転軸はわずか3度とこっちも前代未聞じゃ。鈴井監督、確か電話では浮き上がるストレートと落ちるストレートを投げるとか言っておったのう」
「はい」
「話を聞いたときは半信半疑じゃったが、このデータを見れば頷ける。2番目に速いストレートでもすでにトッププロレベルのキレがある。このストレートでも十分浮き上がってくるような錯覚を感じるだろうが、1番遅いストレートに関しては、もはやバッターからは逆フォークとでも言わんばかりの軌道に見えるじゃろうな。そして、そんな異常なキレのあるストレートを見せられた後に150越えの棒球がきたら、まるで落ちるストレートがきたような錯覚を感じるのも無理はないわい」
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