安達弾~打率2割の1番バッター~ 第20章 特待生 比嘉流星の入部⑭

「マジっすか」

「もしかして俺達」

「すごい才能があったりして」

「その逆じゃ。ストレートに変化球、3人とも図ったように特出した能力のない平々凡々な結果となっておる。これは逆に珍しいぞい」

「なんだよ」

「がっくし」

「期待して損した」

「まあまあそう落ち込むでない。君達はまだ高1じゃろ。これからの練習や体の成長しだいではいくらでも化ける可能性があるんじゃぞ」

「戸楽博士の言う通りだ。これからもっと成長できるように頑張れよ」

「はい!」

 新入部員3人に続いて、今度は3年の吉田がマウンドに上がると、ストレート、スライダー、カーブ、チェンジアップと持ち球全てをそれぞれ交互に10球ずつ、計40球投げた。その様子を見ていた新入部員の3人は、予想外にいい投球をする吉田に頭を抱えていた。

(うわーマジかよ)

(球速も変化球のキレや変化量も、全てにおいて俺達を上回っている。データなんて見なくてもわかるほどに)

(この人からエースの座を奪うなんて……うん、無理だな。ならまずは、2番手ピッチャーを目指すとするか)

 吉田の次に投げたのは、2年の川合だった。

「おい川合! あんまり外れ過ぎると正確に測定できないらしいから、無理かもしれんがなるべくストライクゾーン近くに投げてくれよ」

「監督、馬鹿にしないでくださいよ。5球に1回くらいしかストライクに入らなかったノーコン時代の俺は、もうここにはいませんよ」

 そう豪語して投球を始めた川合だったが、ストライクゾーンに入った球は、20球中わずか7、8球だけだった。

「どうっすか監督。もういい加減、俺を試合に出してもいいんじゃないっすか?」

「まだまだ威張れるレベルのコントロールじゃねえだろうが! せめて2球に1回はストライクに入れられるようにならんと話にならんな」

「ちょっと待ってくださいよ。確か前は3球に1回って言ってましたよね? 話が違うじゃないっすか!」

「あの時はまだ比嘉が入部してなかったからな。比嘉か吉田が怪我でもして、他に投げられるピッチャーがいないみたいな状況にでもならん限り、今のお前はまだ出場させるつもりはない」

「そりゃないっすよ~」

 そんな川合と鈴井監督の会話が耳に入らないくらい、新入部員の3人は川合の投球に衝撃を受けていた。

(確かにコントロールは悪いけど)

(滅茶苦茶速い。150くらいは出てるんじゃねえか)

(この球速に荒れ球……俺がバッターだったら、怖くてまともに打てる気がしない)