安達弾~打率2割の1番バッター~ 第20章 特待生 比嘉流星の入部⑬

 東京の郊外に建っている怪しげなビル。鈴井監督はそのビルの駐車場に車を停めた。

「このビルの13階が、今回の目的地だ。俺はエレベーターで行くが、お前らは階段で行け。これも、トレーニングの一環だ」

「はい!」

 軽快に1段飛ばしで登っていく吉田と川合。それに負けじとついていく比嘉。6、7階付近で力尽き、ゆっくりと階段を登る新入部員の3人。

 新入部員の3人がやっと13階に到着し中に入っていくと、そこには2つのマウンドがあり、そのうちの1つは複数のカメラに囲まれていた。そしてガラス越しに見える隣の部屋には、白衣をまとった禿げ頭に白い髭をモジャモジャと生やしたメガネのおじいさんがパソコンを叩いていた。

「戸楽博士、お久しぶりです。今日はよろしくお願いします。ほら、お前達も挨拶しろ」

「よろしくお願いします!」

「ふぉっふぉっふぉ。随分たくさん連れてきたのう。それで、まずは誰から測定するんじゃ?」

「じゃあ取り合えず新入部員の佐藤、田中、渡辺の順に測定してもらうか。おい佐藤、まずは奥のマウンドで肩を作ってくれ。肩が出来上がりしだい、カメラに囲まれた方のマウンドに立って投球してもらう。そこで佐藤が測定してもらっている間、次の田中は奥のマウンドで肩を作っておいてくれ。で、佐藤の測定が終わったら次は田中の測定。渡辺は奥のマウンドで肩を作る。この流れでやっていくぞ」

「はい!」

 肩を作り終えた佐藤が測定用のマウンドに立つと、鈴井監督が質問する。

「佐藤、お前の持ち球を全部言ってくれ」

「ストレート以外だと、カーブだけです」

「ならストレートとカーブを交互に10球ずつ投げてくれ」

「はい!」

 佐藤の投球が終わると、続いて田中がマウンドに立つ。

「田中、お前の持ち球は?」

「スライダーだけです」

「ならストレートとスライダーを交互に10球ずつ投げてくれ」

「はい!」

 田中の投球が終わると、続いて渡辺がマウンドに立つ。

「渡辺の持ち球は何だ?」

「カーブとスライダーです」

「ならストレート、カーブ、スライダーを交互に10球ずつ投げてくれ」

「はい!」

 こうして、新入部員3人の投球が終了すると、戸楽博士はそのデータを素早く分析した。

「ほーこれは興味深い結果が出たのう」