安達弾~打率2割の1番バッター~ 第20章 特待生 比嘉流星の入部①

 ドラフト1位指名の黒山聡太、そしてドラフト3位指名の水谷卓也という2人のプロ野球選手を輩出したことにより、一躍知名度を上げた船町北高校野球部。

 一方で、そんな偉大な先輩達が引退した後の新チームはというと、秋季大会の2回戦で無名校に負けるなど結果を残せておらず、船町北高校野球部はすっかり落ちぶれてしまった、そんな評価をされていた。

 しかし、当の部員達はというと、そんな評価をされていることなどは気にも止めず、ただひたすら、鈴井監督が掲げた機動力野球ができるチームとなれるよう地道に練習を続けた。

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 2017年。4月1日。船町北高校野球グラウンド。この日、はるばる沖縄から、ついにあの男がやってきた。

「初めまして。比嘉流星っす」

 鈴井監督が沖縄でスカウトしてきたという特待生の比嘉に、部員達は興味津々だった。特に、船町北高校野球部の正捕手としてマスクを被るようになっていた西郷は、一刻も早く比嘉流星の投手としての能力を確かめたくてしかたがなかった。

「比嘉君、おいどんはキャッチャーの西郷拓也たい。早速だけんど、持ち球を教えてくれたい」

「持ち球? ストレートだけっすけど」

「えっ! マジたいか?」

「マジっす」

「そうたいか。じゃあ夏の大会までにせめて1つは変化球を覚えたほうがよかたいね」

「はっ? 自分、ストレート以外は投げる気ないっすよ」

「えっ?」

「自分が目指す理想のピッチャーは、ストレート1本で相手をねじ伏せる、そんなピッチャーっす。だから、変化球なんてものに頼るつもりはありません」

「高校野球はそんな甘くないたい!」

「ていうか先輩、俺のストレート捕れるんすか? いくら俺のストレートが凄くたって、先輩がちゃんと捕ってくれないと抑えられるもんも抑えられませんよ」

「そこまで言うなら今から投げてみろたい。安達相手にな」

「えっ? 俺?」

「安達、調子に乗ってる糞生意気な後輩の鼻を、ホームランでも打ってへし折ってやれたい!」

 そんなこんなで、入部したばかりの比嘉と安達がいきなり勝負することとなった。