安達弾~打率2割の1番バッター~ 第19章 ドラフト会議2016③
「第1巡選択希望選手 阪神チーターズ 千石聖人 投手 大阪西蔭高校」
(おおっ、ここで初の千石がきたか。怪我で手術したばかりというマイナス要素をもってしても1位指名されるとは、本当にすごい逸材だな)
「第1巡選択希望選手 福岡ダイナマイトホークス 千石聖人 投手 大阪西蔭高校」
(ダイナマイトまで千石を指名してくるとは。でもあそこは投手力が球界一豊富だからな。即戦力にはならなくても、長い目でじっくり育てられる余裕があるのだろうな)
「第1巡選択希望選手 売読ジャイアンツ 千石聖人 投手 大阪西蔭高校」
「ジャイアンツまで千石かよ。もしかしたら、手術明けの千石が最多競合とかいう前代未聞の事態までありえるぞ」
「第1巡選択希望選手 北海道北ミートファイターズ 黒山聡太 投手 船町北高校」
(くっそー北ミートめ。あと少しで単独指名できるチャンスだったに邪魔しやがって。まあでも、黒山君ほどの逸材を他の球団が見逃してくれる訳がないか)
「第1巡選択希望選手 東京ヤルグドスワローズ 黒山聡太 投手 船町北高校」
(ガーン……最後の最後で2球団連続黒山君指名ときましたか。これで確率は3分の1。井原監督、どうか黒山君を引き当ててください!)
千石聖人、百瀬剛三、黒山総太の3選手がそれぞれ3球団ずつ競合するという珍しい形になったドラフト1位指名。クジ引きの結果、千石聖人は売読ジャイアンツ、百瀬剛三は埼玉東武ライオンズがそれぞれ交渉権を獲得した。そして、黒山聡太は……。
「真山監督がガッツポーズを見せました。黒山投手の交渉権を獲得したのは、東京ヤルグドスワローズです」
(いや、まだわからないぞ。真山監督は去年、外れクジを当たりだと勘違いしてガッツポーズをしてしまった前科がある。今回もきっと何かの間違いだ。そうに違いない)
しばらくはこうして現実逃避をしていたスカウトの野宮だったが、いつまで経っても間違いだったという情報が流れないまま、外れ1位指名、2位指名、そして3位指名と放送が進んでいくのを見て、ようやく現実を受け入れ始めた。
(黒山君は絶対うちに入って欲しかったが、いつまでも落ち込んでいる訳にはいかないな。俺がスカウトしてきたのは、何も黒山君だけじゃない。同じ高校の水谷君がいるじゃないか。残念ながらもう1人スカウトしていた白田君には断られてしまったが、水谷君はアンダースローとオーバースローを両方組み合わせたピッチングをする前代未聞のピッチャーだ。話題性だけなら、黒山君にだって負けていないぞ。球団と何度も交渉して、当初は6位指名の予定を4位にまで上げてもらった。これで万が一にも、他の球団に水谷君を取られることはないだろう)
そんなことを考えていた野宮の耳に、まさかの声が入ってきた。
「第3巡選択希望選手 東北喜点イーグルス 水谷卓也 投手 船町北高校」
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません