安達弾~打率2割の1番バッター~ 第18章 1日だけの夏休み③

(そうだわ。何もわざわざアナウンサーになってまで競争率の高い現役の野球選手にアプローチなんてしなくても、将来野球選手になれそうな有望な若い子に唾を付けておけばいいのよ)

 思い立ったが吉日。綾乃は早速安達バッティングセンターに行って、バイトをしようと企んだ。全ては、将来有望そうな弾と仲良くなって、玉の輿に乗るために……。

「ごめんね。うち、そこまで繁盛してないからバイトとか募集してないんだわ」

 そうあっさり断られてしまった綾乃だったが、ただでは帰らなかった。

「それじゃあこれ、私の電話番号なんでもしも人手が必要になったらここに連絡してもらってもいいですか?」

 それから数か月後。夏の甲子園千葉大会での安達の大活躍によって、急激に客が増加した安達バッティングセンター。

(こんなに忙しいと、1人でやっていくのは厳しいな。バイトでも雇うか。そういえば、前にバイトしたいとか言ってわざわざやってきた可愛い女の子がいたな。電話番号を書いたメモ帳が確かこの辺に……あったあった)

 こうして綾乃は、狙い通り安達バッティングセンターで働くこととなった。

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(それにしても、安達君の体……まだあどけなさが残るベビーフェイスとは不釣り合いな、鍛え上げられたがっしりとした上半身。うーん、たまんないわ。弾君がシャワーから上がってきたら、襲っちゃおうかしら)

 綾乃がそんなことを妄想している間、シャワーを浴びている安達もまた、綾乃のことを考えていた。

(綾乃さん……すんげーエロかったな)

 若い女子大生のシャワー上がりのバスタオル姿や、胸の膨らみが強調されたTシャツに生足が丸見えのショートパンツ姿というのは、年頃の男子高校生がエロい妄想に取り付かれるのには十分すぎる程の破壊力を持っていた。

 安達がシャワーから上がると、テーブルには普通サイズのチャーハンと大皿に山盛りにされたチャーハンがそれぞれ1つずつ置かれていた。

「弾君、召し上がれ」

 綾乃はそう言って、山盛りの方のチャーハンが置かれた席に安達を座らせた。

「うわーおいしそう。いただきまーす」

「どう?」

「滅茶苦茶うまいです」

 ガツガツとチャーハンを食べ進め、あっという間に完食する安達。

「ご馳走様でした」

「凄い食べっぷりね。じゃあ私のも上げちゃおっと」

 そう言って、食べかけのチャーハンを皿とレンゲごと安達に渡す綾乃。

(これって、間接キスだ……)

 内心ドキドキしながらも、残りのチャーハンを全て平らげる安達。

「さすがは高校球児。食用旺盛ね。それじゃあ最後に、デザートはいかが?」

「デザート? アイスとかですか?」

「いいえ」

「じゃあプリン?」

「いいえ」

「ゼリーかな? それともヨーグルト? あっ、フルーツとか?」

「ブブー。正解は……」

 綾乃はおもむろに立ち上がると、安達のすぐ目の前まで近づいていった。

「ワ・タ・シ♡」