安達弾~打率2割の1番バッター~ 第17章 夏の甲子園決勝 龍谷千葉VS大阪西蔭⑥

「ストライク!」

「ストライク!」

「ストライク! バッターアウト!」

 4球全てストレートで押した先頭バッター清村兄との対戦とは打って変わって、2番バッターの小林相手には、高速縦スラ、高速横スラ、変化量の大きな横スラと全て違う変化球で三振に抑えた千石。続く3番バッターの鈴木は、初球の外角低めへの変化量の大きい横スラを引っかけてピッチャーゴロとなった。

 こうして千石は、1回の表を僅か8球で終わらせた。

(千石やべー)

(強すぎる)

(こんなピッチャー相手に勝てるのかよ)

 スタンド席で試合を見ていた龍谷千葉高校野球部の補欠メンバー達は、千石の凄さに圧倒されていた。

(そんな千石に対して)

(こっちの先発は村沢)

(ダメだ……勝てる気がしない)

 夏の甲子園千葉大会決勝で先発した村沢は、船町北打線を完封で抑える見事な投球をした。しかし、それとは打って変わって甲子園の全国大会での村沢の成績は褒められたものではなかった。

 7日の初戦の先発を任された村沢は、2回を終えて5失点という大乱調っぷり。その後はなんとか持ち直したものの、5回を投げて5失点という不甲斐ない結果に終わった。次に登板した13日の2回戦の先発では、5回を投げて4失点。6回からリリーフ登板した16日の3回戦では、2回を投げて2失点。7回からリリーフ登板した18日の準々決勝では、3回を投げて2失点。甲子園の全国大会にきてからの村沢の成績は、防御率7.80という不安定なものだった。

(なんで村沢なんかに決勝戦の先発を任せるんだよ)

(山田先輩や佐藤先輩がいるっていうのに。あー納得いかねー)

(監督、村沢の奴がたまたま船町北相手に完封した時の良いイメージを引きずり過ぎじゃね?)

 1年生でレギュラー入りしただけでなく、決勝戦という大舞台での先発まで任された村沢に対して、補欠メンバー達の不満は募るばかりだった。

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 大阪西蔭