安達弾~打率2割の1番バッター~ 第17章 夏の甲子園決勝 龍谷千葉VS大阪西蔭⑲
2016年8月22日。夏の甲子園決勝戦が終わった翌日のスポーツ新聞1面は、一紙を除いて優勝した大阪西蔭高校の話題で埋まっていた。
『ニュースター誕生 万場兄弟 大阪西蔭優勝』
『エース千石緊急降板を乗り越えて 大阪西蔭優勝』
『大阪西蔭優勝 龍谷千葉準優勝』
『大阪西蔭優勝 神リリーフ 万場兄弟』
『圧巻の強さ 大阪西蔭優勝』
『1日で2位に返り咲き 強いぞ阪神』
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「カキーン!!!」
6回裏2アウト満塁。2番田所の打球は走者一掃のタイムリースリーベースとなり、大阪西蔭は一気に3点を追加した。先発の村沢はここで降板。リリーフ登板した佐藤が後続を断った。
123456789
龍谷千葉 000001
大阪西蔭 000003
7回表。龍谷千葉打線は万場兄弟相手に三者凡退。そして7回裏、佐藤は大阪西蔭打線にあっさりと打ち込まれ2点を追加される。
123456789
龍谷千葉 0000010
大阪西蔭 0000032
8回表。龍谷千葉打線は万場兄弟相手にまたもや三者凡退。そして8回裏、佐藤に代わって登板した山田だったが、佐藤同様さらに2点を追加されてしまう。
123456789
龍谷千葉 00000100
大阪西蔭 00000322
そして9回表。せめて1点でも返して意地を見せたい龍谷千葉打線だったが、万場兄弟のサイドスローを最後まで攻略することができないまま、三者凡退に倒れ試合は終了した。
123456789 計
龍谷千葉 000001000 1
大阪西蔭 00000322× 7
(結局、俺の出番はあらへんかったか。ええことや。万場兄弟、これからはお前たちが大阪西蔭高校野球部を引っ張ってくれ)
千石の緊急降板をただ1人だけ予測し、万場兄弟が危なげのない投球をしている間もいつでもいける準備をしていた百瀬は、この日ニュースターとなった頼もしい後輩2人に心の中でエールを送っていた。
(ワイ、もう一生野球できへんかもな……)
悲願の甲子園優勝を果たし喜びを爆発させるチームメイト達を横目に、エース千石はただ1人だけ、敗北した龍谷千葉ナイン達と同じような悲しみの表情を浮かべていた。
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