安達弾~打率2割の1番バッター~ 第17章 夏の甲子園決勝 龍谷千葉VS大阪西蔭⑯
(球数はすでに100球近く。そしてこの大ピンチ。なのに何や? あいつから湧き出る、あの不気味なオーラは)
打席に立つ星田は、不敵な笑みを浮かべる村沢を見て警戒心を強めていた。
(いやいや、緊張を誤魔化すために無理やり笑ってるだけやろ。俺のやることはただ1つ。こいつから点を奪うことだけや)
そんな星田に対して、村沢はスライダー気味の癖球を、ビーンボールスレスレの顔面付近に投げ込んだ。
「うわっ!」
思わずのけぞる星田。
「ボール!」
(今のわざとか。もしかしてこいつ、俺を殺す気じゃないやろな)
2球目。村沢はさっきと同じ球を、今度はギリギリストライクゾーンの内角高めに投げた。
「ストライク!」
(いやいや、考え過ぎや。ただのコントロールミスやろ)
3球目。村沢は今度はストレートで、初球とほぼ同じビーンボールスレスレ球を投げ込む。再びのけぞる星田。
「ボール!」
(考え過ぎやない。こいつ、俺にぶつける気や。おい審判、ちゃんと注意しろや)
4球目。村沢は2球目とほぼ同じ内角高めのスライダー気味の癖球を投げ込んだ。
「ストライク!」
(あいつにとって今の球は投げ損じ。次はまた顔面付近にぶつけにくるはずや。こうなったら、あいつが投げた瞬間に外に移動してビーンボールを無理やり打ち返したる)
5球目。村沢が投げる瞬間、バッターボックスの外側に移動してビーンボールを打ち返す準備をする星田。しかし、村沢の投げた球は星田の予想に反して、外角低めへの落ちる癖球だった。
(コノヤロー!)
ビーンボールを打ち返す準備をしながらも、頭の片隅には内角攻めからの外角球という王道配球の可能性を残していた星田は、とっさに腕を伸ばしながらバットを当てにいった。
「カキーン!!」
三塁線に鋭い打球が飛んでいく。
(ここまで攻めたリードをしても打たれるのか)
清村弟村沢バッテリーがそう思った瞬間だった。
「パン!」
サードの片岡が、横っ飛びで抜けそうな当たりをキャッチすると、すぐに立ち上がりサードベースを踏みながらセカンドへ送球する。セカンドの西村がそれをキャッチすると、またすぐにファーストへと送球する。
「アウト!」
「アウト!」
「アウト! スリーアウトチェンジ!」
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龍谷千葉 00000
大阪西蔭 00000
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