安達弾~打率2割の1番バッター~ 第17章 夏の甲子園決勝 龍谷千葉VS大阪西蔭⑮
ノーアウト満塁。そして、相手エースの緊急降板という絶好のチャンスからも得点を奪えなかった龍谷千葉高校。
ノーアウト満塁。そして、エースの緊急降板という絶体絶命のピンチからも失点を許さなかった大阪西蔭高校。
この4回表の攻防で、試合の流れをつかみ損ねた龍谷千葉高校と、流れを引き戻した大阪西蔭高校。0対0という現時点でのスコアには表れない、圧倒的な優位性が大阪西蔭側にはあった。
4回裏。この回の先頭バッターは、4番でピッチャーの千石から交代した万場兄弟の兄浩一だったが、あっさりと三振に倒れた。しかし、5番星田、6番佐々木が連続ヒットを打ち、1アウト1,2塁。続く7番こそファーストの遠藤から交代した万場兄弟の弟浩二が兄と同じく三振に倒れたものの、続く8番川本が8球粘ってからのフォアボールで出塁。大阪西蔭打線は、2アウトながら満塁という絶好のチャンスを作っていた。大歓声が飛び交う甲子園。
「カキーン!!!」
9番バッター水島の当たりは良かったもののセンターがギリギリ追いつき、村沢はこの回を何とか無失点に抑えた。
(あの兄弟のバッティングが全然だったおかげもあって、なんとか無失点に抑えられたか。リードしている俺にはわかる。村沢は良く投げてる。だがそれ以上に、大阪西蔭打線のレベルが高い。初回から毎回ヒットを打たれてるし、村沢が点を取られるのも時間の問題だな。だから何としても、バッティングで援護してやらないと)
しかし、5回の表も龍谷千葉打線は、万場兄弟にあっさりと三者凡退に抑えられた。
そして5回裏。村沢はフォアボール2つとヒット1つでノーアウト満塁と追い込まれていた。しかし、次のバッターは4番の万場兄だったため、自動アウトで1アウト満塁となった。だが以前として、ピンチは続く。
(やばいぞ。次のアウト要因までまだ2人も抑えないといけないのか。どう村沢をリードしてやればいいんだ)
大阪西蔭に送られる大歓声も相まって、精神的にも追い込まれていくキャッチャーの清村弟。しかし、そんな清村弟とは対照的に、村沢のテンションはマックスや最高潮といった言葉では言い表せないほどまでに上がりまくっていた。
(前の回もピンチだったが、今はそれをさらに超える大ピンチ。観客達は、前の回の満塁でも得点を奪えなかった大阪西蔭に、今度こそはと期待を寄せながら枯れそうなくらい大声を張り上げて声援を送り続けている。あーたまんない。こいつらがまた期待を裏切られて、一気に静まり返る姿を想像しただけで興奮してくるぜ)
不敵な笑みを浮かべる村沢を見て、清村弟は我に返った。
(あいつは全然やる気だ。俺が弱気になってどうする。ガンガン攻めてくぞ)
清村弟はサインを出すと、ミットをバッター星田の顔面近くに構えた。
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龍谷千葉 00000
大阪西蔭 0000
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