安達弾~打率2割の1番バッター~ 第16章 練習試合14連戦⑦

 2016年8月20日。船町北高校野球部の練習試合14連戦が全て終了した。最終的な戦績は4勝10敗。つい先日千葉の甲子園予選で準優勝した学校とは思えないような戦績に、部員達も暗い表情を浮かべる。そんな中、鈴井監督が口を開く。

「まあまあそんな暗い顔をするな。お前ら、このデータを見てくれ」

 そう言って鈴井監督は、練習試合の前半7試合と後半7試合の各選手の盗塁成績一覧を見せた。

     前半7試合  後半7試合 

     成功 失敗  成功 失敗

 星   13 1   14 1

 安達  13 4   17 4

 山田  5  6   5  4

 西郷  4  1   3  0

 野口  4  5   5  3

 村田  3  6   4  5

 鈴木  2  3   3  3

 滝沢  2  4   4  2

 佐々木 1  3   2  3

 吉田  1  5   2  5

 芳根  0  2   2  2

 所   0  2   0  3

 溝上  0  3   1  2

 伊藤  0  5   2  3

「この表を見てわかるように、少しずつではあるが確実に盗塁成績が改善傾向にある。まだまだ時間はかかると思うが、最終的にはチームの盗塁成績が8割以上、出来れば9割を超えるようなチームが理想的だ。その最終目標に向けて、これからも走塁練習や実践での盗塁練習に力を入れて欲しい」

「はい!」

「あとこれは根本的な問題だが、打率が低過ぎる。この14連戦の相手は、全体的に投手レベルが低めだった。この程度の相手なら、最低でも5割は打てないと強豪校の投手には全く歯が立たんぞ。今のところ合格レベルは、安達、キャプテン、山田くらいか。安達レベルは無理にしても、キャプテンのような足を生かしたバッティングなら努力次第で身につけられるはずだ。そこでだが……」

「キャプテンの俺が直々に、バントヒットの極意を教えてやる。バント以外でも、盗塁のコツとか聞きたいことがあれば何でも聞いてくれ」

「はい!」

「それと明日の練習だが、予定を変更して午後の2時前には終了する」

「えっ?」

「どうしたんですか急に?」

「お前ら、ニュースを見てないのか? 明日は甲子園の決勝戦だぞ。さすがにこの試合は見逃せないだろ」

「あっ、そういえば」

「どこが残ってるんですか?」

「俺達が2か月前の練習試合で2連敗した大阪の絶対王者、大阪西蔭高校……」

「やっぱり残ったか」

「西蔭強いもんな」

「千石に百瀬とかチートだろ」

「そしてもう1校は、同じく俺達が1か月前に甲子園予選決勝で敗れた、龍谷千葉高校だ」