安達弾~打率2割の1番バッター~ 第16章 練習試合14連戦⑥

 船町北高校野球部の練習試合14連戦。その内の前半7連戦が終了した。戦績は、2勝5敗と大きく負け越していた。

(伊藤が投げた3戦で負けるのはしょうがないとしても、吉田が投げた4試合で勝ち越せなかったというのはだらしないな。しかし、これが今のうちの実力だ。真摯に受け止めんとな。えーと、選手別の盗塁成績を並べるとこんな感じか)
   
     成功 失敗

 星   13 1

 安達  13 4

 山田  5  6

 西郷  4  1

 野口  4  5

 村田  3  6

 鈴木  2  3

 滝沢  2  4

 佐々木 1  3

 吉田  1  5

(そして、他の選手はまだ1度も成功できていないのか。これじゃあ負け越す訳だな。しかし、まだ始まったばかりだ。長い目で見ていこう。それにしても、まさか安達がいきなりここまでの結果を残すとはな。単打狙いのバッティングも板に付いてきたみたいだし、これからもっとたくさんの経験を積める。安達が星並みの盗塁技術を習得するのは、案外早いかもしれんな。映像を見て気付いたが、安達はスタートのタイミングがかなり早い。これは憶測だが、やはり目がいいのだろうな。安達は子供の頃からバッティングセンターで速球を見続けてきた。そこで鍛えられた動体視力が、投手の投球モーションを盗むのにも役立っているのだろう。だがそれにしても、ベースランニングのタイムで今でも伊藤と最下位争いをしている安達がこの成功率を残せるというのは、やはり不思議だな。それと、正捕手争いだが……)

    打席 打数 安打 四球 許盗塁 盗塁刺
 
 山田 17 15 10 2   5   1

 西郷 13 10 1  3   2   3

(まさか山田が、ここまで打てるとはな。ホームランこそないが、打率だけなら安達並みだぞ。そしてまさか西郷が、ここまで打てないとは。キャッチャーとしての能力や盗塁のうまさだけを見れば西郷で決まりだが、この山田のバッティングを捨てるのは惜しいな。うーん……もう少し様子を見るとするか)