安達弾~打率2割の1番バッター~ 第14章 新体制スタート⑨

「監督、何すか今の! 俺が全国に行ったのはバレーの大会ですし、エースはエースでもエースアタッカーすよ。あんな詐欺まがいな交渉をするなんて、見損ないましたよ」

 理事長との交渉が終わって部屋を出たあと、川合は鈴井監督に食ってかかった。

(やはりそうくるか)

 鈴井監督は、事前に川合が抗議してくることを想定して、こんな妄想をしていた。

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「川合、あの交渉が詐欺になるかどうかは、今後のお前しだいだ。この先お前がこのチームのエースと呼ばれるくらい成長して甲子園に行くことができれば、さっきの交渉は詐欺ではなくなる。川合、少なくても俺は、お前にそれだけの可能性があると信じている。だから川合、来年くるエース候補の特待生になんか負けないように頑張れよ」

「監督……一生ついていきます」

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(これで俺の監督としての威厳が、一気に上がるはずだ)

「川合、あの交渉が詐欺になるかどうかは、今後のお前しだいだ。こ……」

 鈴井監督が事前に考えていたセリフをまだ半分も言い終わらない途中で、川合が口を挟んできた。

「まっ、確かにそうっすね。この先俺がエースになって甲子園出場を決めれば、さっきの話も詐欺ではなくなる。全く、仕方ねえなあ。俺が監督を、詐欺師から名将に変えてやりますよ。ホント、世話の焼ける監督だなあ」

(俺の監督としての威厳を上げるつもりが……完全に舐められてるじゃねえか。ていうかこいつ、ろくにストライクも入らない初心者のくせに、何でこんな強気なんだ? この野郎、一発ぶん殴ってやる)

 鈴井監督の怒りは頂点に達し、拳を振り上げようとするも、すぐに思い直した。

(いやいやダメだダメだ。今時鉄拳制裁なんてしたらすぐに問題にされて、再来年どころか今すぐ首を切られてしまうぞ。ここは一旦冷静になろう)

 鈴井監督は振り上げかけた拳を胸に当てながら、ゆっくと深呼吸した。

「それは頼もしいな。川合、期待しているぞ」