安達弾~打率2割の1番バッター~ 第15章 スカウトの旅②

2021年3月14日

 前の晩、居酒屋でお酒と沖縄料理を堪能した鈴井監督は、ひどい二日酔いで目覚めた。

(うえー気持ち悪い。出かけたくねー)

 鈴井監督は顔を洗うと、二日酔いに効く薬でも買おうとホテルの売店へ向かった。

(頭いてー。泡盛の強さを甘くみてたな。こんな状態じゃあ、今日も特待生候補探しはできそうにないか)

 そんな時、鈴井監督の目に飛び込んできたのは、『沖縄酒豪伝説』という6文字だった。

(何だこれ? なるほど。沖縄産のウコンが使われてるのか。何か凄い効きそうだな。試してみるか)

 鈴井監督は早速、購入した沖縄酒豪伝説を1包、水と一緒に流し込んだ。

 1時間後。

(すごい。さっきまでの頭痛が、嘘のように消えている。沖縄酒豪伝説、名前に恥じない効き目だな)

 沖縄酒豪伝説のおかげですっかり元気を取り戻した鈴井監督は、レンタカーを借りると、特待生の候補となるエースピッチャー探しへと出発した。

(とりあえず今日は、この3つのチームを見に行ってみるか)

 鈴井監督は、事前に沖縄の中学野球の強豪チームをリサーチし、10チームほど目星をつけていた。

(できれば実戦形式で本気で投げているところが見たいが、そううまい具合にはいかないか)

 そんなことを考えながら、鈴井監督が最初に訪れた中学校のグラウンドでは、丁度練習試合が行われようとしていた。

(おお、なんという偶然。えーと、相手チームは……おお、これまた偶然。次に行こうとしていた学校じゃないか。これは幸先がいいな)

 鈴井監督は度重なる幸運に感謝しながら、たった今始まった練習試合の様子を、両校のピッチャーに注目しながらじっくりと観察した。

(うーん、正直微妙だな。悪くはないんだけど、どっちのピッチャーも頭1つ抜けたものを感じないな)

 まだ試合は途中だったものの、鈴井監督はその場をあとにして、3つ目に見に行く予定だった那覇中央中学校へと向かった。

(ガーン)

 那覇中央中学校のグラウンドでは、サッカー部が試合をしており、野球部の姿は見当たらなかった。

(まあ、こういうこともあるよな)

 鈴井監督は一旦、スマホで調べた評判のいいソーキ蕎麦屋さんへ立ち寄って遅い昼食を済ませたあと、明日見に行く予定だったボーイズのチームが練習するグラウンドへと向かった。

(ガーン)

 そのグラウンドには、誰も人がいなかった。

(2連続で空振りか。そろそろ日が暮れそうだし、今日はここまでにするか)

 鈴井監督は昨日のホテルに戻るため、車を走らせた。

(おっ!)

 ホテルに戻る途中、鈴井監督は学校のグラウンドで試合をしている少年達を見かけた。

(リストにはない中学校だが、せっかくだしちょっと覗いてみるか)