安達弾~打率2割の1番バッター~ 第13章 決勝戦 船町北VS龍谷千葉㉛

「カン!」

「ファール!」

 星はど真ん中にきた癖球を、カットしてファールにした。

(よし、カットできた。ヒットは難しくても、最初っからファール狙いでいけば、意外とさばけるもんだな。このまま相手がフォアボールを出すまで、ひたすらカットしまくってやる)

 星は前の回で、村沢のコントロールが乱れ始めていたことに着目し、この打席はフォアボール狙いでいこうと決心して打席に上がっていた。

(今のバッティング、明らかにヒットを打つ気がなかったな。まるで、最初からカットする気満々な感じだった。やっぱりこいつ、フォアボール狙いか。こうなったら持久戦だ。村沢、もうど真ん中にしか構えないぞ)

 7球目、馬場はど真ん中にミットを構える。球種は、ストレート。

「カン!」

「ファール!」

 8球目、馬場はど真ん中にミットを構える。球種は、落ちる癖球。

「カン!」

「ファール!」

 9球目、馬場はど真ん中にミットを構える。球種は、スライダー気味の癖球。

「カン!」

「ファール!」

(しつけーな。これじゃあ切りがない。本当なら1番三振を奪える確率の高いスライダーをここいらで混ぜたいところだが、さっきの投球練習だと2球連続で大外ししてたんだよな。やっぱり安全に攻めよう)

 10球目、馬場はど真ん中にミットを構える。球種は、スライダー気味の癖球。

「カン!」

「ファール!」

 11球目、馬場はど真ん中にミットを構える。球種は、スライダー気味の癖球。

「カン!」

「ファール!」

 12球目、馬場はど真ん中にミットを構える。球種は、ストレート。

「カン!」

「ファール!」

(しつこいな。コントロールが乱れている割には、さっきから連続でストライクゾーンに入ってきやがる。ほぼ真ん中の甘いコースばかりだけど。こうも甘いコースが続くと、いい加減ヒットを狙いたくなるな。だが我慢だ。そうやってうちの打線は今まで、凡打の山を築き上げてきたじゃないか。だからなんとしても、この打席はフォアボールで出塁してやる)

 ※ここから先は、『馬場はど真ん中にミットを構える。球種は、ストレート。「カン!」「ファール!」』という文章をX。『馬場はど真ん中にミットを構える。球種は、スライダー気味の癖球。「カン!」「ファール!」』という文章をY。『馬場はど真ん中にミットを構える。球種は、落ちる癖球。「カン!」「ファール!」』という文章をZとする。

 13球目。Y

 14球目。X

 15球目。Z

 16球目。X

 17球目。Y

 そして、18球目。とうとう作者まで文章を書くことを投げ出し始めるほどの長い長いこの持久戦に、ようやく終わりが訪れた。

「ボールフォア!」