安達弾~打率2割の1番バッター~ 第13章 決勝戦 船町北VS龍谷千葉㉑

 安達に対する3回目の敬遠により、球場は龍谷千葉への大ブーイングが巻き起こる異常な状況になっていた。この嫌な流れを断ち切るため、清村弟はタイムを取ると村沢の元に駆け寄った。

「村沢、一旦深呼吸して落ち着こう。いいか、敬遠はルール上認められている正当な作戦だ。俺達は何も悪くない。文句のある奴はルールを決めている高野連にでも言えってんだ。おい、村沢? 聞いてるか?」

「この感じ……あの時と同じだ」

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 7年前。当時小学生だった村沢は、父親に連れられてプロレスの試合を見にきていた。ベビーフェイスの2人がタッグを組んで、ヒール役のレスラー達を次々と倒していく。観客達が大盛り上がりする中、村沢はその様子を冷めた目で見ていた。

(どうせこのまま正義が勝って終わりだろ? これじゃあヒーローショーと同じじゃん。つまんないなあ)

 当時の村沢は、戦隊ヒーローシリーズを何度も見ている内に、最後には正義が勝つという予定調和な展開に飽き飽きしていたところだった。

 そんな中、突如禍々しい音楽が流れると、スキンヘッドにもじゃもじゃの髭を蓄えた巨大な外国人ヒールレスラー、オックス・ザ・ジャイアントが登場した。

(こいつがラスボスか。どうせこいつも倒すんでしょ)

 ベビーフェイスの2人は最初こそ巨大なオックス・ザ・ジャイアントに苦戦を強いられるも、タッグ技を駆使して形勢を逆転させる。

(ほらね。やっぱり思った通りの展開だ)

 ところが、オックス・ザ・ジャイアントはやられそうになる直前、隠し持っていた五寸釘を使って難を逃れると、仲間からもらった有刺鉄線が巻き付けられたバットを使って反撃を始める。会場中が大ブーイングをする中、村沢だけはオックス・ザ・ジャイアントを応援していた。

「オックス・ザ・ジャイアント頑張れ! 予定調和をぶち壊すんだ!」

 オックス・ザ・ジャイアントはボロボロになったベビーフェイス2人の首をチェーンで締め上げて完膚なきまでに叩きのめすと、両手の中指を突き立てながら勝利宣言をした。

 こうしてオックス・ザ・ジャイアントは、観客席からの嵐のような怒号に見送られながら、会場を後にした。

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「あの時のオックス・ザ・ジャイアント、カッコ良かったなあ」

「オックス・ザ・ジャイアント? 何言ってんだ?」

「俺はこの試合で黒山に投げ勝って、オックス・ザ・ジャイアントになってやる!」