安達弾~打率2割の1番バッター~ 第13章 決勝戦 船町北VS龍谷千葉⑲

 7回の表。この回の先頭は、3番バッターの黒山。4番の安達を絶対に敬遠すると決めている村沢・清村弟バッテリーにとっては、絶対に抑えたい相手。つまり逆を言えば、黒山にとってはチャンスを広げるために何としても出塁したい場面となる。黒山は少しでも高い確率でヒットを打つため、作戦を練っていた。

(ストレート、スライダー、スライダー方向に曲がる癖球、落ちる癖球。村沢の持ち球は、恐らくこの4種類。さっきの打席で見たスライダー方向の癖球は、バットに当たる直前で曲がった。落ちる癖球も同様に直前で曲がると考えると、変化し始めるのを見てから当てにいこうとしても、まず間に合わない。つまり、癖球を打つためには最初から狙い球を絞る必要がある。もしもスライダー方向に曲がる癖球を打ちにいった場合、狙い通りの球がくれば2回に1回はヒットにできるだろう。しかし、ストレートや落ちる癖球がきた場合は、ほぼ確実にゴロを打ってアウトになってしまう。スライダーはとりあえずノーカンで計算すると、1/2×1/3=1/6 打率に換算すると2割以下か。ダメだ。低過ぎる。これはストレートや落ちる癖球を狙った場合でも同じ確率になる。となると、狙うはスライダーか。スライダーなら狙いが外れたところで空振りになるから、最低でも3回は挑戦ができる。スライダーがくる確率が1/4だとすると、3回スイングして当たる確率は、3/4×3/4×3/4=27/64 1-27/64=37/64 狙い通りスライダーがきてヒットにできる確率が1/2とすると、37/64×1/2=37/128 打率に換算すると3割近い。よし、スライダー狙いでいこう)

「早く打席に入りなさい!」

 黒山は作戦を考えるのに没頭していて、球審に注意されるまで村沢の投球練習が終わったことに気付いていなかった。

(何か作戦でも考えていたか。とりあえず様子見で、外に外すか)

 清村弟は、初球に外に外すストレートを村沢に投げさせた。見逃せばボール球だが、黒山はスライダーを狙っていたため、中に入ってくると予想してスイングをしてしまった。

「ストライク!」

(あの球を打ちにいくということは、恐らくスライダー狙いだな。それなら……)

 最初の1球で見事黒山のスライダー狙いを見抜いた清村弟は、その後も2球続けて村沢にストレートを投げさせることで、あっさりと黒山を三振に抑えた。

(柄にもなく色々考え過ぎた結果、完全に裏目に出ちまったな。やっぱり俺は、本能のままにきた球を打ちにいった方が性に合ってるぜ)