安達弾~打率2割の1番バッター~ 第13章 決勝戦 船町北VS龍谷千葉⑰

 黒山のカットボール解禁により、龍谷千葉打線は完全に黒山鶴田バッテリーの手玉に取られていた。清村兄の三振を皮切りに、2番バッター小林、3番バッター鈴木と3者連続三振であっさりと4回裏の攻撃を終えてしまった。

(この嫌な流れ、俺が止めてやる)

 5回の裏。そう意気込んで打席に上がった清村弟ですら、ヒットどころか球にバットを当てることすらできないまま三振に抑えられると、5番バッター田中、6番バッター西村と6者連続三振で5回裏の攻撃も終わってしまった。

 一方、癖球を解禁した村沢の方も負けていない。5回の表を6番バッター尾崎、7番バッター白田、8番バッター水谷と三者凡退に抑えると、6回の表も先頭の鶴田を内野ゴロに抑えていた。

 1アウトランナーなし。ここで打席に上がるのは、1番バッターの星だった。

(黒山がスライダー方向の横に曲がる癖球だと言っていたかと思ったら、新垣は落ちる癖球だとか言い出すし、みんな混乱している。ランダムに方向が変わるのか、もしくは2種類の癖球を投げ分けているのか。どっちにしろ、やっかいなことには変わりないが、共通して言えることは変化が少ないということ。つまり、バントやプッシュバスターならよく見れば当てられるはず。内野の守備位置は……若干前進気味だな。セーフティーバントを狙うのは難しそうだ。ここはセーフティーバントを狙う振りをして内野が前にダッシュしてきたところを、プッシュバスターで頭の上を抜く。これで決まりだ)

 村沢が投球を始めた瞬間、星はバントの構えを見せる。それを見た内野陣は前にダッシュする。球がベース上へと近づいてくる。集中して目を凝らす星。球が僅かに横に動く。

(ここだ!)

 星はバントの構えのままスイングを始めた。

「カキーン!」

 打球は前進しているサードの頭の上を超えていく。

(よし、今日初ヒットだ!)

 そう確信しながら一塁方向へと走る星の耳に、信じられない声が聞こえてきた。

「アウト!」

 驚きながら星が振り向くと、そこにはサードの定位置辺りでミットを掲げながら横になっている、ショート清村兄の姿があった。

(俺がバントの構えをした瞬間、瞬時にプッシュバスターがくることを察知して打球方向を予測しあそこまで動いたのか。なんて守備力だ。2年前の中学最後の試合、この前の春季大会の第1打席、そして今。あいつ1人の守備に、俺は今まで3本もヒットを防がれている。清村兄……本当にムカつく野郎だぜ)

 味方の好守にも助けられながら、村沢は5回に続いて6回も3者凡退に抑えた。

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 船町北  000000
 龍谷千葉 00000