安達弾~打率2割の1番バッター~ 第13章 決勝戦 船町北VS龍谷千葉⑯

(スライダー気味の横に曲がる癖球だって聞いていたのに、今の球、落ちたような……)

 ダブルプレーに倒れた新垣は、そんなもやもやを抱えながら4回裏の守備についた。

(ピッチャーの村沢が、あんないい当たりのバッティングを見せているんだ。俺も結果出さねえとな)

 この回の先頭バッター清村兄は、前の回での村沢のバッティングを見て、静かに闘志を燃やしていた。

(何かこの打席の清村兄には、嫌な予感がするな)

 清村兄の闘志を敏感に感じ取った鶴田は、慎重に攻めていこうと初球を外角の外に外れるストレートのサインを出した。

「カキーン!!」

 左バッターの清村兄が打った逆方向へと飛んでいく鋭い打球は、惜しくも3塁線を切れてファールとなった。

(あっぶねー。初回ではまだ捉えきれていなかったストレートを、外のボール球にも関わらずあんな打球を飛ばすとはな。修正能力が半端ない。このままじゃ打たれそうだな。ここらであの球を解禁するか)

 鶴田がサインを出す。黒山が頷き、投球を始める。

「ストライク!」

 清村兄はその球を見送った、というよりも、手が出せなかった。

(初球のストレートをヒットにできなかったあの時点で、そろそろカットボールを解禁してくるだろうと予想はしていた。そして予想通りカットボールがきた。映像で何度も見ていたし、バットの届くコースなら打ちにいこうとも思っていた。それなのに……)

 黒山が3球目を投げ始める。

(やばっ、まだカットボールの分析が終わってないのに……)

 清村兄は慌ててバットを出したが、中途半端なスイングで黒山のストレートに空振りの三振を喫した。

(何をやっているんだ。カットボール1つでここまで動揺するなんて俺らしくもない。それにしても、映像と打席から生で見るカットボールの印象がここまで違うとはな)

 黒山のカットボールに驚いていたのは、清村兄だけではなかった。

(さっきのカットボール、危うく捕り損ねるところだったな。練習試合や投球練習で黒山のカットボールは何度も受けてきたが、変化のキレはここまで鋭くはなかった。甲子園出場を賭けたこの大舞台で、しかも実戦で投げるのは3週間ぶりというこの状況で、ここまでのカットボールを仕上げてくるとは。黒山が味方で、エースでいてくれて本当に良かったな)