安達弾~打率2割の1番バッター~ 第13章 決勝戦 船町北VS龍谷千葉⑮
4回の表。この回の先頭は、3番バッターの黒山だった。
(4番の安達を全打席敬遠するとなると、黒山を出塁させてしまったら、四球だろうがシングルだろうがツーベースだろうが自動的にノーアウト1,2塁のピンチになってしまう。ここはなんとしても抑えたい。そろそろ村沢の癖球を解禁するか)
清村弟は内角へ、スライダー気味の癖球のサインを出した。
(やっと投げさせてもらえる。なんだかんだこの球が、1番投げやすいんだよな)
村沢はサインに頷くと、投球を始める。
(今のところ、村沢が投げている球はストレートとスライダーのみ。本当に投げてくるかわからない癖球を警戒し続けるよりも、1打席目と同じように初球から積極的に打っていった方が良さそうだな)
そんなことを考えながら待ち構えていた黒山は、内角にきたストレートと思しき球にバットを振った。
「カーン!!!」
完全に詰まった当たりとなったその打球は、セカンドゴロのアウトになった。
(内角の少し甘いコースにきたと思ったストレート。それが、バットに当たる瞬間には内角ギリギリのコースになっていた。スライダー? いや、初打席で打ったスライダーは少なくてもボール3個分以上は変化していた。それに対して今の球は、せいぜいボール半個から1個分程度しか変化していない。スライダーにしては変化量が少なすぎる。ということは、やっぱり今のが癖球か。とうとう投げてきたな)
「安達、スライダーの方向にボール半個から1個分曲がる癖球に気を付けろ」
打席に上がる直前の安達にそう言い残した黒山だったが、その助言は安達にとって何の役にも立たなかった。
「ボール!」
「ボール!」
「ボール!」
「ボールフォア!」
(龍谷の奴らめ、安達とは徹底して勝負しない気か。まあいい。全打席出塁させてもらえるということは、それだけ得点のチャンスが増えるということ。5番の新垣、6番の尾崎あたりが打ってくれれば何の問題もない。黒山の情報によれば、噂の癖球の正体はスライダー方向にボール半個分から1個分曲がる球だと判明した。これでそろそろヒットも出てくることだろう。この回、先制点を取る予感がしてきたぞ)
しかし、そんな鈴井監督の予感は、見事に外れる。
「カーン!!」
球を叩きつけてしまった新垣の打球はダブルプレーとなり、あっという間に4回の船町北の攻撃は終了してしまった。
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船町北 0000
龍谷千葉 000
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