安達弾~打率2割の1番バッター~ 第13章 決勝戦 船町北VS龍谷千葉⑪
清村兄を三球三振で抑えた勢いそのままに、黒山は続く2番小林、3番鈴木も三振に抑えた。球種は全てストレートのみ。黒山の調子が良かったことはもちろんだが、事前に龍谷側が得ていたカットボールを投げてくるかもしれないという情報が、小林と鈴木に余計な警戒をさせてしまう裏目に出てしまっていた。
2回の表。村沢は6番尾崎、7番白田、8番水谷をあっさりと三者凡退に抑えた。球種はストレートとスライダーのみ。村沢の調子が良かったことはもちろんだが、事前に船町北側が得ていた癖球を投げてくるかもしれないという情報が、これまた尾崎と白田と水谷に余計な警戒をさせてしまう裏目に出てしまっていた。
そして2回の裏。黒山がこの回の先頭で迎えるバッターは、4番の清村弟だった。
(初回に兄ちゃんが黒山から食らった三振。あれは昨日の三街道戦で兄ちゃんが細田から食らった三振とは全くの別物だ。初めての対戦で情報の少ない中、高身長から角度のある特殊なストレートを投げてくる細田になら、三振するのもまだわかる。だが黒田の場合は1度対戦経験があるし、何よりも2か月前からずっと対策を練って練習してきた。その黒山相手に、初見のカットボールならともかくただのストレートで見逃しの三振を食らうなんて……それだけ凄いストレートだったということだ。まずは1球見て、そのストレートがどれほどのものか見定めないとな)
初球、黒山が投げたのは内角低めへのカーブだった。
「ストライク!」
(初回は全球ストレートだったのに、ここにきてカーブか)
2球目、黒山が投げたのは外角へのまたもやカーブ。
「ストライク!」
(2球連続でカーブだと! しまった。ストレート狙いを見透かされたか。しょうがない。カーブの軌道を2球もしっかり確認できただけよしとしよう。次にカーブがストライクゾーンにくれば、確実に捉えられる。そして問題はストレートやカットボールがきた時だが、恐らくカットボールはまだ投げてこないだろう。2巡目、3巡目の対戦を考えて温存してくるはず。少なくとも俺がキャッチャーならそうする。そしてストレートをどう打つか……ボール1個分、いや2個分上を振ろう。兄ちゃんが空振りするストレートだ。それくらいは伸びてくるはずだ)
3球目、さっきまではセットアップで投げていた黒山が、突然ワインドアップのフォームに変えて投げようとしていた。それを見た清村弟は、二ヤリと口元を緩める。
(黒山がワインドアップで投げる時は、全力の球を投げる時だけ。しかもその球種は、ほとんどストレートのみ。うちの情報量を舐めるなよ。ボール3個分上に変更だ!)
黒山が投じた球は、清村弟の予想通りストレートだった。清村弟は待ってましたと言わんばかりのフルスイングを始める。
(当たれー!!!!)
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