安達弾~打率2割の1番バッター~ 第11章 夏の甲子園に向けて①

 大阪西蔭高校との練習試合で2連敗した船町北ナイン。新幹線と電車を乗り継いで大阪から千葉の船町北高校の寮に帰ってきた頃には夜の9時を回っていた。

(はぁ~今日は疲れたな)

 安達は食事とシャワーを簡単に済ませると、自分の部屋のベッドに潜り込んだ。

「ガーーーーゴーーーーガーーーーゴーーーー」

 大きな仕切りを挟んだ向こう側にいる、安達と同室の1年生部員川合俊二が大きなイビキをかいて寝ている。

(しまった。俊二の奴、図体だけじゃなくてイビキまででかいんだよな。いつもは俺の方が先に寝ちゃうからあんまり気にならなかったけど。うーん……しょうがない。こいつのイビキの中でも眠れるくらいクタクタになるまで練習でもするか)

 安達はユニフォームに着替えると練習場へ向かった。

「カキーン!!」

(こんな夜遅くに他にも練習している人がいるのか)

 安達が練習場に入ると、そこには大阪西蔭高校との練習試合から帰ってきたばかりのレギュラーメンバー達が実家通いの黒山を除き全員勢揃いしていた。

「おお安達! お前がこんな時間にくるなんて珍しいな」

「先輩達、もしかしていつもこんな遅くまで練習してたんですか?」

「いつもって程でもないけど、時々な」

「すごいっすね。僕なんて夜は疲れてすぐ寝ちゃうのに」

「お前のせいだよ」

「えっ?」

「ほら、春の大会といいその後の色んな強豪校との練習試合といい、打線はいつもお前のホームラン頼りだったからさ」

「俺達も先輩として負けてらんねえってことで、自然と夜練の数が増えていったって訳だ」

「ということで悪いけど、今はピッチングマシーン3台とも俺達が使ってるから無理だぞ」

 船町北高校にはピッチングマシーンが全部で3台ある。そのうちの1台は安達がバッティングセンターで使っていたものと同じく、最高時速160キロの直球と、カーブ、スライダー、フォーク、シンカ―、シュートの変化球5種類が最速140キロで投げられるというもので、安達が入部する年に部費を使って鈴井監督が新たに購入した。そして残りの2台は、最高時速140キロのストレート、カーブ、フォークの3種類しか投げられない。さらに投げる度に1球1球手作業で球を入れなければならないため、練習の際には2人1組になって練習する必要があった。

(福山先輩、新垣先輩、尾崎先輩、鶴田先輩、星先輩、丁度5人か。これじゃあ使えないな)

「安達、暇なら実戦形式で勝負しようぜ」

「水谷との勝負が終わったら俺とも勝負しろよ」

「おい白田、あの曲がり過ぎるスライダーだけは使うなよ」

「わかってるよ。今使ったら安達を怪我させかねないからな」

(先輩達、みんな疲れてるはずなのに……俺ももっと頑張らないとダメだな)

 この日の練習は、日付を回った深夜まで続いた。