安達弾~打率2割の1番バッター~ 第10章 練習試合2試合目 船町北VS大阪西蔭②

 13時30分。船町北VS大阪西蔭の練習試合2試合目が始まろうとしていた。

 船町北高校スターティングメンバー 

 1安達(一) 2白田(右) 3水谷(左) 4黒山(投) 5福山(三)           

 6新垣(二) 7尾崎(遊) 8鶴田(捕) 9星(中)          

 大阪西蔭高校スターティングメンバー

 1三浦(中) 2田所(二) 3山本(三) 4千石(投) 5星田(右) 

 6佐々木(左) 7遠藤(一) 8川本(捕) 9水島(遊)

「この試合は十中八九千石と黒山の投手戦になるだろう。ということで先制点をいかに早く取れるかが重要になってくる。そこで今回は1番千石から得点を奪える可能性の高い安達に打席が回る数を1つでも増やすために打順を先頭にした。星を9番にしたのも安達の前に足の速いランナーが塁に出た方が得点の可能性が高くなるという考えからだ。みんな映像で何度も見てわかっているとは思うが、千石の強さの秘訣はその球速の速さと3種類のスライダーだ。まずはストレート、最高時速は158キロと黒山以上に速い。そしてそれ以上にやっかいなスライダーは高速縦スラ・高速横スラ・スピードは若干遅いがその分変化量の大きい横スラの3種類。狙い球を絞るにしても簡単に打てる球が1つもないから相当苦労するとは思う。だがこのまま2連敗で千葉に帰るというのは気分が良くない。相手が千石だろうがこの試合、全力で勝ちにいくぞ!」

「はい!」

 野球人生で初の1番バッターとして打席に立った安達は、前の試合で1本もホームランを打てなかった汚名返上を誓って打席に立った。

 初球、外角低めにストレート。

「ストライク!」

(速い! スピードだけなら本当に黒山先輩以上だ。でも黒山先輩のストレートの方が伸びがあるしスピードならピッチングマシーンのストレートの方が若干速い。全然打てない球じゃないぞ)

 2球目、外角の少し高めに速い球がきた。

(打てる!)

 安達はバットを振りにいくが、球は鋭く縦に変化して安達のバットをかわした。

「ストライク!」

(今のが千石3大スライダーの1つ、高速縦スラか。この縦スラ、黒山先輩のスライダーに似てるけど変化するタイミングがこっちの方がギリギリだし球速も若干こっちの方が速い。完全に上位互換だな)

 3球目、千石の投じた球は大きく外に外れていた。

(随分大きく外したな。コントロールミスか?)

 しかし、そこから球はグニャリと大きく変化しベース上の外側をギリギリかすめながらミットに収まった。

「ストライク! バッターアウト!」

(あそこからストライクになるのかよ! 今のが大きく曲がる横スラか。くそ、全く手も足も出なかった)

 チームナンバー1バッターの安達が全く何もできないまま3球で抑えられたのを見て、船町北ナインも鈴井監督も少なからずショックを受けていた。

 

 試合は3回の裏を向かえていた。これまで両チーム通じて無失点が続いている。一見互角に渡り合っているようにも思えるが、その内容は全く違った。

 大阪西蔭先発の千石は、安達を三球三振に抑えたのを皮切りに、9打席連続三振という離れ業をやってのけていた。

 一方船町北先発の黒山は、得点こそ許してはいないものの、初回に1安打、2回にも1安打を許し、三振はまだ1つしか奪えていないという状況だった。

(さすがは大阪西蔭打線。普段から千石の速球を見なれているせいか、俺のストレートにも普通に当ててきやがる。変化球を投げても食らいついてくるし、相当うざいな。唯一の救いは、長打力のある選手が少ないことか)

 黒山はこの回、安打を2つ許したものの、何とか得点は許さないまま2アウトまでたどり着いていた。ランナーは2、3塁。ここで迎えるバッターは、ピッチャーでありながら4番を任されている千石だった。

(初回の対戦では空振りの三振に抑えれたけど、かなり鋭いスイングをしていたな。確か千石の打撃成績は、打率が3割くらいでピッチャーの百瀬を除けば大阪西蔭の中では最低。だけど、チームのホームラン数の半分以上を千石1人で占めている。パワーだけ見ればチーム1の実力者。こいつにだけは打たれる訳にはいかない)

 初球、内角高めにストレート。千石はフルスイングの豪快な空振りを見せた。

(すげースイングだな。パワーだけなら安達並みかも。だが、当たらなければ意味ねえよ)

 2球目、外角の低めにカーブ。低めに外れてボール。

(初回はこれを振ってくれてたんだけどな。もう通用しないか)

 3球目、外角低めにストレート。見逃しのストライク。

(いいコースに決まったな。さて、これで追い込んだけどここからどう投げる?)

 キャッチャーの鶴田は外角の低めに外れるスライダーを要求した。

(まあそうなるよな。お願いだからこのスライダーで空振ってくれ)

 4球目に投じたスライダーは、狙いよりも高めに浮き上がった。その甘い球を千石は見逃さなかった。

「カキーン!!!」

 逆方向のライトへの強い打球が飛んでいくもあとひと伸び足りず、外野フェンスギリギリのところでライトの白田がなんとか追いついた。

「アウト! スリーアウトチェンジ!」

 何とかこの回も無失点に抑えることができた黒山だったが、鈴井監督は黒山のこれまでの投球に全く満足できていなかった。

(黒山の奴、あれほどスライダーのコントロールを改善しろと言ったのに、全然できてないじゃないか! この試合、今のところなんとか0対0で進んでいるが、そろそろやばいかもな。この流れを変えるには、安達のホームランしかない。安達、次の打席こそ頼むぞ!)

 船町北 0-0 大阪西蔭