安達弾~打率2割の1番バッター~ 第10章 練習試合2試合目 船町北VS大阪西蔭⑩

「あークソ! 何であそこで抑えられなかったんだ! エースの俺がこんなんじゃ甲子園で優勝できねえじゃねえかよ!」

 帰りの新幹線の中で、黒山はいつまでも嘆いていた。

「黒山の奴、まだ悔しがってるよ」

「大阪西蔭打線を相手に11回の2アウトまで無失点に抑えておいてあの悔しがりようだもんな。これじゃあ4回1失点の俺は立場がねえよ」

「今の言葉、4回4失点の俺への嫌味か?」

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 11回裏2アウト満塁。黒山が6球目に投げたストレートを打った三浦の打球は、どん詰まりの当たりだった。

(アウトだ!)

 黒山や鶴田、そして打った三浦自身もそう思っていたが、どん詰まりの打球はサードとショートと前進守備をしていたレフトの丁度中間地点にポツリと落ちた。

 こうして、11回にも及ぶ長い試合はあっけない形で幕を閉じた。

 船町北 0-1 大阪西蔭

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「はぁ~」

 帰りの新幹線の中で、安達はいつまでも落ち込んでいた。

「おい安達、いつまで落ち込んでんだよ。ホームラン打てなかったくらいでそんなに落ち込まれたら、ヒットすらろくに打てなかった俺達の立場がねえだろ」

「星先輩。別に、ホームランを打てなかったから落ち込んでる訳じゃないです。まあ確かに悔しいですけど」

「じゃあなんで落ち込んでるんだ?」

「最後に黒山先輩が打たれて試合が終わった時、一瞬ほっとしてしまったんです。もうあのサイドスローと対戦しなくてすむって……それが悔しくて」

「何だ、そんなことか。それなら俺も思ったよ。あのサイドスローはヤバイよな。もう二度と対戦したくねえ。同じ地区じゃなくてホント良かったよ」

「でも甲子園に行ったら対戦するじゃないですか。やっぱりちゃんと対策しておかないと」

(こいつ……もう甲子園に出場が決まった前提で話してやがる。安達のこういうとこ、ちょっと黒山先輩と似てるな)

「おいおい、それは気が早すぎるだろ。まずは地区予選で勝ち残ることを考えないと。まあでも、地区予選でああいうタイプのピッチャーと対戦する機会もあるかもしれないし、左のサイドスロー対策はやっといて損はないかもな。それよりさ、お前気付いてないかもしれないけど、今日の練習試合、2試合連続でエラー0だったな」

「あっ、そういえば」

「やっぱり気付いてなかったか。春の大会の頃は毎試合必ず1回はエラーしてたのに、ここ最近は2試合に1回くらいになって、今日はついに2試合連続ノーエラー。しっかり練習の成果が出てるじゃねえか。良かったな」

「はい、ありがとうございます」

「試合で活躍できなかった日は、後悔ばかりが残ってメンタルがやられがちになるけどさ、そういう時は少しでもプラス要素を見つけて前向きにならないとな」

「なるほど! 僕は今まで試合で活躍できなかった日がなかったので、とても参考になりました」

「てめえ調子にのるなよコノヤロー!」

 一方その頃大阪西蔭高校では、11回裏まで無得点という不甲斐ない結果に激怒した戸次監督命令による、投手以外の1軍レギュラー全員の居残り練習が行われていた。