お気に入りの傘(東京新聞300文字小説没作)

 タカシ君は誕生日に、大好きなキャラクターの絵が描かれた傘を買ってもらった。

 その日以来タカシ君は、晴れているにもかかわらず毎日そのお気に入りの傘をさして学校に通っていた。

 そんなある日、学校に行ったタカシ君がいつもよりもずいぶん遅い時間に帰ってきた。

「タカシどうしたのよこんな遅くまで」

「いやー帰ろうとしたら雨が降ってきたからさ、雨がやむまで学校の中で雨宿りしてたんだよ」

「あんた傘持ってるじゃないの。なんでさしてこなかったのよ」

「だって、せっかくのお気に入りの傘が濡れちゃうじゃないか」