脱皮(東京新聞300文字小説没作)

 夏休み。私と夫と息子の三人でキャンプに出掛けた。

 魚釣りやバーベキュー、キャンプファイヤーなどを終え、そろそろテントで寝ようとしていた頃、息子が偶然、脱皮している途中のセミを発見した。

 こんな機会はめったにないと、私達はセミの脱皮の様子を最後まで観察することにした。

 少しずつ皮を破りながら懸命に外に出ようとするセミの姿を、私達は固唾を呑んで見守った。

 セミを発見してから約一時間後、ついにセミの体の全部が外に出たのを見届けると、私達は安心して眠りについた。

 それから数日後、キャンプですっかり日焼けした私達家族三人の、脱皮が始まった。