レンタル傘屋さん(東京新聞300文字小説没作)

 急に雨が降ってきた。どこかに雨宿り出来る所は……あっ、あんな所にレンタル傘屋さんがある。ちょうどいい。借りていこうかな。

「すみませーん、傘を1本貸してください」

「1万円になります」

「え! 1万円って高過ぎません?」

「いえいえ。この1万円は傘を返していただく時に全額お返ししますから、実質タダですよ」

「あーなるほど。それなら良心的ですね。はい、1万円」

「返却期限は特にありませんので、好きな時に返してくださいね」

 いやー良いお店だったな。でも、あれじゃあ儲けがでないよな。やっていけるのかな?

 それから数日後。借りていた傘をうっかりコンビニで盗まれてしまった僕は、あのお店がやっていけている理由を理解した。