悩む時間は無駄(東京新聞300文字小説没作)

「実は俺、最近悩んでることがあって……」

 俺が住むマンションに遊びにきた友人が、突然そんなことを切り出してきたので、すかさず俺はこう言ってやった。

「悩んでるなんて、むやみやたらに言うもんじゃないぞ。悩んでるってことはな、次にやるべき行動に集中できていないということだ。そんなことを言う暇があったら、さっさと次の行動を決めて動き出すんだ」

「なるほど……ありがとう。目が覚めたよ。じゃあ早速、行動に移しますか」

 友人はそう言い残すと、勝手にバルコニーへと向かい出した。

「おい、何やってんだ?」

 俺がそう声を掛けた頃、すでに友人は、手すりを飛び越えていた。