前借り(東京新聞300文字小説没作)

「ねえ母さん。来月分のお小遣い前借りさせてくれないかな?」

「ダメよ。お小遣いは毎月月初めにあげるって決まりでしょ」

「そこをなんとか頼むよ。来年の高校受験に向けて新しい文房具を買って勉強のモチベーションを上げたいんだよ」

「勉強嫌いのあんたが珍しいわね。そういうことならいいわよ」

「やったー。母さんありがとう。早速買いに行ってくるよ」

「ただいまー」

「ちょっとあんた。それゲーム機じゃないの。文房具はどうしたの?」

「買ってないよ。本当はこのゲーム機を買いたくて前借りしたんだ」

「じゃあさっきの話は嘘だったってこと?」

「うん。来月のお小遣い日はエイプリルフールだからね。嘘も前借りしたんだよ」